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ヨーロッパの電子書籍化が遅れる理由

「電子書籍化が進むアメリカ。進まない日本」という風説をよく聞くけど、ヨーロッパの事情はあまり知られていない。オイラも全く知らなかったのでTwitterでたくさんの人たちがハッシュタグ#denshiをつけたこのエントリは読み応えがあった。
Why there's no EU Kindle: the view from a European suburb | FutureBook

以下に要点をまとめた。

  • 第1にAmazonの不在。ヨーロッパにはAmazonがない。Amazonは英語の本を売るだけでいいが、ヨーロッパのオンライン書店がヨーロッパ全部の言語で書かれた電子書籍を売るのは難しい。ヨーロッパのオンライン書店は昔ながらの書店が経営しており、電子書籍ビジネスにあまり関心を寄せていない。
  • 第2に税金。EUでは紙の本にかかる税率が非常に低いが、電子書籍に対しては重い。紙の本を読むのは文化だが、Kindleの読書は文化ではないのだ。マーシャル・マクルーハン曰く「メディアはメッセージである」。
  • 第3に多言語と翻訳の問題。ヨーロッパでは多くの本が翻訳される。これらの本が電子化されると翻訳者への報酬がもう一度発生する。既刊書を電子化するとき、仮に売り上げの50%が作家の代理人 (literary agent) に、20%が税金に、30%が小売りに渡ると合計100%だ。これでは出版社と翻訳者への支払いぶんがない。代理人の受け取るぶんを25%に減らしても出版社と翻訳者の諸費用を補うには至らない。
  • 第4は英語の本を読む非英語ネイティブがEUで増えていることだ。当然AmazonのKindle本についても同様であり、ヨーロッパにいながらEUの税金と関税を支払わずに安いアメリカ価格で本を買えるのだ。EU当局はこのような「国境を越える電子書籍」に対する課税方法をまだ決めていないのが現状である。
  • ここまで述べたことを簡潔に言おう。逆説的な話だが、EU当局の硬直した姿勢、代理人の貪欲、及びヨーロッパの文化的多様性がAmazonのようなアメリカの書店の優位性をもたらし、英語を商業と文化における主要言語たらしめている。ヨーロッパに書籍販売のビジネスモデルが導入され、1台の電子書籍端末でさまざまな言語を扱えるようになればこのような動きはゆるやかになると思われる。

これを投稿したのは Miha Kovac さんという人で、is currently publisher at Mladinska knjiga Group in charge of company’s digital strategy and associate professor at the Department of Information Science at the University of Ljubljana, Slovenia. In 2008, his first book in English Never Mind the Web. Here Comes the Book was published by Chandos in Oxford. だそうだ。

Miha Kovac さんは「ヨーロッパにはAmazonがない」とおっしゃるが、実際には http://www.amazon.co.uk/, http://www.amazon.fr/, http://www.amazon.de/ がある。おそらく彼に言わせると「English Amazon, French Amaozn, German Amazon はある。しかし EU Amazon はない」ということだと思う。印税とか原稿料とか税金などのカネに関係する法律や決まりごとは各国バラバラではなくEU全体で共通しているようだ。ヨーロッパの人たちにとって理想なのは "EU Amazon" または "EU Barnes & Noble" のような形かもしれない。

紙の本が電子書籍よりも安いというヨーロッパの事情は日本とよく似ている。多くの人が勘違いしているが、大雑把に言うと再販制度があっても日本の紙の本はアメリカよりも安い。アメリカではハードカバーがべらぼーに高いからこそ Kindle Edition が歓迎されているのだ。

多言語と多文化云々はさまざまなフォーマットが乱立する日本の事情に似ている…かもしれない。非関税障壁?

この Miha Kovac さんがヨーロッパの電子書籍事情を正確に説明しているかどうかはわかりません。詳しい人がこのエントリに対して補足してくだされば幸いです。

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2010/11/16(火) 07:42:17 | URL | ennuihage #-[edit]
ええ
2010/11/16(火) 19:23:30 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
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