漫画が好きで、よく買う。
漫画を買うとときどきポストカードがついてくる。それをいつも百均で売っているポストカードホルダーに入れて仕舞う。
2年くらい前だったか、ふと、これを家の壁に貼ったら楽しいんじゃないか、と思った。ので貼った。3冊あるポストカードホルダーの中からこれだというものを十数枚選び出して、机の前の壁に、あまり規則的に整列しないように、色味や絵の縦横の配置の塩梅などをなんとなく考えて、貼った。
いいなと思った。
選んだ絵もそうだし、そもそも絵というものそのものが、いいなと思った。
もともと当時の壁には昔手に入れたドロヘドロのA1サイズのポスターが3枚とたまたま手に入れたアリスと蔵六の複製原画が1枚額に入れて飾ってあった。それにとりどりの絵が加わって、眼が楽しい壁になった。
当時白洲正子という人の「なんでもないもの」という本を読んだ。彼女は骨董に傾倒していたそうだが、気に入ったものが自分の家に在るというのは良い、ということを言っていた。
当たり前の話ではあるが、たしかにそうだなと思った。骨董に比べたらこの場合随分小規模なものであるが。
気に入った絵が自宅の壁にあるというのは、良い。自分は絵が好きなんだな、と気づいた。
自分が何が好きで何が嫌いか、というのがそんなにわかっていない。なんとなく繰り返していることがあったり、なんとなく避けていることがあったりして、ある時ふと、ああ自分はこれが好きなのか、あるいは嫌いなのか、と気づくことがある。ごくまれにだが、ある。
誰かが自分の周りにいたら指摘されてすぐ気づいたりするのかもなと。自分の周りには誰もいないので自分でもよくわからないところがたくさんあるのかもなと。自分は鏡を持たない故に自己像のあやふやな部分が大きかったりするのかもなと。
まあわからなくて困ったりすることはないし、こういうことに自分で気づくはけっこう快感であったりするのだが。
して、それからというもの、ポストカードでもなんでも、漫画でもそれ以外でも、気に入った絵をベタベタ壁に貼っている。いいなと思ったものはそこそこ値が張っても買ってみたり、ただで置いてあるパンフレットでも気に入ったものは貰ってそのまま壁に貼ったりしている。
よく漫画でオタクの部屋の壁や天井にタベストリーやらなにやらが所狭しと並んですごいことになっている図を見るが、あれはこういう気分かと今更ながらわかった。昨今はそういう気分で暮らしている。