ある日の夕食だった。
部活帰りでヘロヘロだった私は、完全に思考停止で、すき家へ突入。
三色チーズ牛丼特盛、温玉付き。さらに味噌汁つけて自分を甘やかしMAX。
「今日くらい贅沢してもええやろ……」って思いながら、家に帰って食卓に置いたんだよ。
その瞬間。
「……我が母よ……」
は?????
次の瞬間、湯気の中からぬるっと登場。
学ラン、メガネ、ギトギト前髪。
チー牛(実体化)、爆☆誕。
しかも、そいつ……まっすぐ父に向かって両手を広げながら言ったんだよ。
「ようやく……巡り会えた……我が母にして、我が妻よ……」
情報量、飽和。
父、完全に停止。「……俺、何役なん?」って真顔。
私「知らんがな」
でもチー牛は止まらない。
胸に手を当てて、愛を語り出す。
「私は性別・種族・年齢・調味料すら超越し、全生命体と繁殖可能な存在……」
「あなたとのチーズ・ボンバーな愛は、何度生まれ変わっても、とろけ続ける……」
父は無言で味噌汁すすってたけど、私の怒りゲージはMAXに到達。
そして発動したよ。
――説明しよう。
オーライーターとは、敵の魔力を吸収し、自らのパワーに転換する魔法。
すなわち、チー牛の“恋愛魔力”を逆利用してぶん殴る、禁断のチーズ・カウンター。
ドゴォォォン!!!!
チー牛、5メートル吹っ飛んで壁に突き刺さる。
その衝撃で湯気がスローモーションで舞ってた。
まるで、敗北したロマンチストの残り香。
壁の中から、かすれた声が聞こえた。
「……オーライーター……なんて甘美な魔法……我が子の拳……最高……」
父「なぁ……俺……ほんとに妻顔なのか?」
私「うるせぇ、黙って牛丼食え」
それ以来、我が家では“チーズ”も“母”も“妻”もNGワード。
オーライーターの力をもってしても、あの愛は……溶けきらなかった。