ステッピング電源が音質に悪いという誤解は、いくつかの要因が複合的に絡み合って発生したと考えられます。
ステッピング電源(スイッチング電源)は、高速なスイッチング動作によって電圧を変換するため、原理的に高周波のノイズ(スイッチングノイズ)を発生させます。
初期のスイッチング電源や設計が不十分な製品では、このノイズの抑制が不十分で、オーディオ機器に悪影響を及ぼす可能性がありました。具体的には、可聴帯域外のノイズが歪みや音質の劣化を引き起こすと考えられていました。
オーディオ機器の電源として、古くから安定した直流電源を供給できるリニア電源が用いられてきました。リニア電源は、トランスと整流回路、平滑回路などで構成されており、スイッチング動作がないため、原理的にスイッチングノイズが発生しません。
このため、「リニア電源=高音質」「スイッチング電源=低音質」というイメージが先行して広まったと考えられます。
初期のスイッチング電源は、部品の品質や設計技術が現代ほど高くなかったため、ノイズ対策が不十分な製品も存在しました。これらの製品が「スイッチング電源は音質が悪い」という印象を強くした可能性があります。
技術的な詳細が理解されないまま、「スイッチング」という言葉のイメージからノイズが多いと連想されたり、過去の悪い印象が払拭されずに誤解が広まったりした可能性も考えられます。
しかし、現代のステッピング電源(特にオーディオ機器向けに設計されたもの)は、技術の進歩により、スイッチングノイズを徹底的に低減する工夫が凝らされています。
高性能なノイズフィルターやシールド技術により、ノイズの外部への漏洩やオーディオ回路への影響を最小限に抑えています。
スイッチング時の電圧や電流の急激な変化を抑えることで、ノイズの発生自体を低減する技術が用いられています。
スイッチング周波数を可聴帯域よりもはるかに高い領域に設定することで、ノイズが音質に直接的な影響を与えにくくしています。
ただし、電源の設計や品質は音質に影響を与える重要な要素であることは間違いありません。リニア電源にもメリットがあり、一部のハイエンドオーディオ機器では依然として採用されています。
ステッピング電源が音質に悪いという誤解は、初期の製品の課題やリニア電源との比較、そして技術的な理解不足などが複合的に作用して生まれたと考えられます。現代の高品質なステッピング電源は、必ずしも音質を劣化させるものではありません。