さんたろさん
小学時代は、農家の友達の家に遊びに行くのが楽しみでした。カブトムシやクワガタなどの虫取りや、木イチゴやアケビなどの実を採りに、農家の裏山などに行くのですが、農家の友達は、みんな人懐こく親切でした。農家は大きな敷地の家が多く、遊びに行くと、家の敷地に生えている柿など、沢山頂いて来ました。
お寺の友達の家には、李(すもも)もあり、何故か「すもも」とか「プラム」とは呼ばず「ばたんきょ」と呼んでいました。家で親に話すと「はたんきょう[巴旦杏]」の事だろうと教えてくれました。古風で優雅な呼び方なのだろうと思いました。
ある日、別な農家の友達の家に遊びに行った時、家の敷地に入る手前に用水路が流れていて、その横に、大きな木が生えており、李がなっていました。
「すももだ!」というと、「そうではない」と言うので「プラム?」と聞くと、それも「違う」と。
ならば「ばたんきょ」だろうと自信を持って尋ねると、それまた「違う」と・・・。
「んじゃ、何ていうの?」と聞いたら、
「さんたろさん」
「えっ・・?」
「『さんたろさん』ってこの辺じゃみんな言ってる」
彼は、「さんたろうさん」とは言わず、「う」を付けずに「さんたろさん」って感じで言っていました。
その「三太郎さん」という呼び名が面白く、また奇妙に感じ、印象深く記憶に残っておりました。
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2011年春に植えた我が家の李。12年目にして初めての豊作!
時は過ぎ、2011年の原発震災の時は、私は生まれ故郷の福島県会津の田舎町に住んでいました。
3月11日の東日本大震災の直後に、福島第一原発は1号機、3号機と次々に爆発しました。
それ以前から、ここで原発の記事も書いておりましたので、原発については多少知識がありました。詳しい知人に確認し、3月の段階で、メルトダウンの可能性がかなりある・・と言う情報も得ておりました。
私の住む場所は、福島第一原発からは、直線距離で100kmほど離れていますし、間には幾重にも山が連なっています。放射能を含んだ風が山を越えて来た場合でも、雨が降らなければ日本海に抜けていく事でしょう・・それでもメルトダウンなら避難したほうがいいのかも知れません。
家族と避難することも考えましたが、一応、窓など埃が入り込まないようにテープ等で塞いで、家に留まる事にしました。
留まるのであるのなら、安全に復興する祈願と証にと、果物の木を植えようと考えました。
ちょうどその3月頃には、ホームセンターや苗屋さんで色々な種類の桃の仲間の苗を売っていました。それを買ってきて庭に植えて、実がなって食べられる頃には、放射能の危険性もなくなるように・・と願いも込めて苗を選んで購入しました。
〜東日本が壊滅するような大変な危機を、偶然免れていた・・・・なんて事実は当時は知りませんでした。〜
当時、「桃の類は、違う種類の木を近くに植えておくと、受精して実がなる」と言うような曖昧な知識を持っていましたので、気に入った品種があれば1本だけ購入して、4種類の桃、李、プルーンの苗を購入しました。
ある日ホームセンターで、プラムの苗木に面白い名を発見しました。「サンタローザ」。そこには 何本かの「サンタローザ」の苗が売られていました。 そうか、なるほど!これか!
「サンタローザ」→「さんたろうざ」→「さんたろうさん」→「さんたろさん」
「サンタローザ」よりも和風な「三太郎さん」の方が、親しみが持てていい感じです。
「お稲荷さん」や「お月さん」のように、「さん」を付けて大切に尊重していた感じです。美味しいからでしょう。
全く予期せずに、突然数十年ぶりに「さんたろさん」の正体か分かったのです。・・そして、1本購入しました。
今年初めて「豊作」になった家の李
私は、ものぐさで木の手入れなどは、ほとんどしません。時々枝切りくらいはしています。庭に定植してから、忘れた頃の数年後にやっとほんの5、6個のプラムの実がなり、家族で少しずつ分けて食べました。以降、毎年ずう〜と、数個ずつしか実りませんでした。1つも実らない年もありました。
ところが今年は、予期せず沢山実ったのです。だから、今年は100個以上は収穫できるだろう・・・と見込んでいたら、カラスやムクドリなど多くの鳥が食べに来ました。スモモの実は落ちやすく、彼らが実を突くと、ほとんどの実は音を立てて地面に落ちました。そして地面に落ちたプラムの多くには、鳥が突いた跡がありました。
鳥インフルエンザに罹ると嫌ですので、鳥が突いた実は原則食べません。勿論、無農薬で、木は消毒などしていませんので、小さな虫が沢山入っているような実もありましたが、その部分を避けて食べました。美味い美味い。冷やすとさらに美味い!
先の記事【梅は生でもうめっ!】に
>(熟した梅は)プラムよりも美味いんじゃないかと思いました。
と書きましたが、撤回です。熟した生梅も梅なりの美味しさはありますが、プラムの美味さには敵いません。
プラムと熟した生梅と食べ比べてみました。
・・・プラムの方が甘くて美味でした_Orz..........。
肥料は特に何もやっておりませんが、(生ゴミを近くに埋めたり、刈り取った草を撒いたりはしますが・・)。
この「さんたろさん」の実は非常に甘く味が濃く、それこそ一気に10個以上は簡単にペロリです。
このくらいは直ぐにペロリです。
皮の表面が白っぽくなっているのは、勿論農薬ではありません。
冷蔵庫に冷やしておいたので、露(細かい水滴)が付いたのです。
今年はこれが最後かも(7月19日水曜日現在)・・・
2011年の原発震災の起こった春に、家の庭に、4本の桃やプラムの苗木を植えました。プラムは2種類だったと思います。1本は植えて数年で枯れて、切ってしまいました。今、プラムは1本だけですので、切ってしまったプラムが「サンタローザ」だった可能性もなきにしもあらずですが、きっとこの美味い李が「三太郎さん」だと思います。この美味しい李をこれからは「さんたろさん」と呼ぼうと思います。
見掛けはあまり良くない場合もあり、中に虫が入っている実もありますが、市販のプラムよりも甘くて味が濃くて頗る美味しい実です。生梅は食べない家族も、この李は美味しいと喜んで食べます。 原発が爆発したその春に植えて、12年を経て、今年いきなり沢山の実を付けました。過半数は鳥様に突かれ、食べられたり落ちたりしましたので、今年100個は収穫できませんでしたが、それでも予期せぬ豊作で満足です。来年以降も沢山なって欲しいものです。
今年の逸品!熟し切ってかなり美味そう!
木の下の方の枝に隠れていて、鳥に突かれるのを免れたようです。
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