雑草の言葉

さんたろさん

2023/07/19
作物、畑 6
 小学時代、中学時代、高校時代と、父の仕事の関係で、岩手県一関市の郊外の農村部の田舎で育ちました。
 小学時代は、農家の友達の家に遊びに行くのが楽しみでした。カブトムシやクワガタなどの虫取りや、木イチゴやアケビなどの実を採りに、農家の裏山などに行くのですが、農家の友達は、みんな人懐こく親切でした。農家は大きな敷地の家が多く、遊びに行くと、家の敷地に生えている柿など、沢山頂いて来ました。
 お寺の友達の家には、李(すもも)もあり、何故か「すもも」とか「プラム」とは呼ばず「ばたんきょ」と呼んでいました。家で親に話すと「はたんきょう[巴旦杏]」の事だろうと教えてくれました。古風で優雅な呼び方なのだろうと思いました。


 ある日、別な農家の友達の家に遊びに行った時、家の敷地に入る手前に用水路が流れていて、その横に、大きな木が生えており、李がなっていました。
 「すももだ!」というと、「そうではない」と言うので「プラム?」と聞くと、それも「違う」と。
 ならば「ばたんきょ」だろうと自信を持って尋ねると、それまた「違う」と・・・。
 「んじゃ、何ていうの?」と聞いたら、
「さんたろさん」  
「えっ・・?」
「『さんたろさん』ってこの辺じゃみんな言ってる」
彼は、「さんたろうさん」とは言わず、「う」を付けずに「さんたろさん」って感じで言っていました。
その「三太郎さん」という呼び名が面白く、また奇妙に感じ、印象深く記憶に残っておりました。

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さんたろさん23年
  2011年春に植えた我が家の李。12年目にして初めての豊作!

  時は過ぎ、2011年の原発震災の時は、私は生まれ故郷の福島県会津の田舎町に住んでいました。
 3月11日の東日本大震災の直後に、福島第一原発は1号機、3号機と次々に爆発しました。
 それ以前から、ここで原発の記事も書いておりましたので、原発については多少知識がありました。詳しい知人に確認し、3月の段階で、メルトダウンの可能性がかなりある・・と言う情報も得ておりました。
 私の住む場所は、福島第一原発からは、直線距離で100kmほど離れていますし、間には幾重にも山が連なっています。放射能を含んだ風が山を越えて来た場合でも、雨が降らなければ日本海に抜けていく事でしょう・・それでもメルトダウンなら避難したほうがいいのかも知れません。

 家族と避難することも考えましたが、一応、窓など埃が入り込まないようにテープ等で塞いで、家に留まる事にしました。
 留まるのであるのなら、安全に復興する祈願と証にと、果物の木を植えようと考えました。 
 ちょうどその3月頃には、ホームセンターや苗屋さんで色々な種類の桃の仲間の苗を売っていました。それを買ってきて庭に植えて、実がなって食べられる頃には、放射能の危険性もなくなるように・・と願いも込めて苗を選んで購入しました。
  沢山実った三太郎

 〜東日本が壊滅するような大変な危機を、偶然免れていた・・・・なんて事実は当時は知りませんでした。〜

 当時、「桃の類は、違う種類の木を近くに植えておくと、受精して実がなる」と言うような曖昧な知識を持っていましたので、気に入った品種があれば1本だけ購入して、4種類の桃、李、プルーンの苗を購入しました。
 ある日ホームセンターで、プラムの苗木に面白い名を発見しました。「サンタローザ」。そこには 何本かの「サンタローザ」の苗が売られていました。

 そうか、なるほど!これか!
 「サンタローザ」→「さんたろうざ」→「さんたろうさん」→「さんたろさん」
 「サンタローザ」よりも和風な「三太郎さん」の方が、親しみが持てていい感じです。
「お稲荷さん」や「お月さん」のように、「さん」を付けて大切に尊重していた感じです。美味しいからでしょう。
 全く予期せずに、突然数十年ぶりに「さんたろさん」の正体か分かったのです。・・そして、1本購入しました。

プラムがなった!23年7月
  今年初めて「豊作」になった家の李
 
 私は、ものぐさで木の手入れなどは、ほとんどしません。時々枝切りくらいはしています。庭に定植してから、忘れた頃の数年後にやっとほんの5、6個のプラムの実がなり、家族で少しずつ分けて食べました。以降、毎年ずう〜と、数個ずつしか実りませんでした。1つも実らない年もありました。
 ところが今年は、予期せず沢山実ったのです。だから、今年は100個以上は収穫できるだろう・・・と見込んでいたら、カラスやムクドリなど多くの鳥が食べに来ました。スモモの実は落ちやすく、彼らが実を突くと、ほとんどの実は音を立てて地面に落ちました。そして地面に落ちたプラムの多くには、鳥が突いた跡がありました。
 鳥インフルエンザに罹ると嫌ですので、鳥が突いた実は原則食べません。勿論、無農薬で、木は消毒などしていませんので、小さな虫が沢山入っているような実もありましたが、その部分を避けて食べました。美味い美味い。冷やすとさらに美味い!


 先の記事【梅は生でもうめっ!】に
>(熟した梅は)プラムよりも美味いんじゃないかと思いました。
と書きましたが、撤回です。熟した生梅も梅なりの美味しさはありますが、プラムの美味さには敵いません。

梅とプラム23年7月
 プラムと熟した生梅と食べ比べてみました。
・・・プラムの方が甘くて美味でした_Orz..........。


 肥料は特に何もやっておりませんが、(生ゴミを近くに埋めたり、刈り取った草を撒いたりはしますが・・)。
 この「さんたろさん」の実は非常に甘く味が濃く、それこそ一気に10個以上は簡単にペロリです。

プラム今年最後の収穫23年7月
  このくらいは直ぐにペロリです。
  皮の表面が白っぽくなっているのは、勿論農薬ではありません。
  冷蔵庫に冷やしておいたので、露(細かい水滴)が付いたのです。
  今年はこれが最後かも(7月19日水曜日現在)・・・


 2011年の原発震災の起こった春に、家の庭に、4本の桃やプラムの苗木を植えました。プラムは2種類だったと思います。1本は植えて数年で枯れて、切ってしまいました。今、プラムは1本だけですので、切ってしまったプラムが「サンタローザ」だった可能性もなきにしもあらずですが、きっとこの美味い李が「三太郎さん」だと思います。この美味しい李をこれからは「さんたろさん」と呼ぼうと思います。

 見掛けはあまり良くない場合もあり、中に虫が入っている実もありますが、市販のプラムよりも甘くて味が濃くて頗る美味しい実です。生梅は食べない家族も、この李は美味しいと喜んで食べます。 原発が爆発したその春に植えて、12年を経て、今年いきなり沢山の実を付けました。過半数は鳥様に突かれ、食べられたり落ちたりしましたので、今年100個は収穫できませんでしたが、それでも予期せぬ豊作で満足です。来年以降も沢山なって欲しいものです。

プラム23年その3
 今年の逸品!熟し切ってかなり美味そう!
  木の下の方の枝に隠れていて、鳥に突かれるのを免れたようです。

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Comments 6

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たっきー

おはようございます

桃栗三年て云いますから、わりと実がなるのは早いんでしょうかね、震災から原発危機と2011年は大変な年でしたね

私の母は木を植えるのが好きで、事あるごとに木を植えてくれます。実のなる木ばかりです・・・

巴旦杏
祖母はハランキョウと発音していたように記憶しています

スモモが大好物でした

2023/07/20 (Thu) 06:54
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: おはようございます

 確かに、李は苗木を植えてから3年くらいで実がなり始めたと思います。でも数は少なく、ほんの数個だけ・・という時期が昨年までずっと続きました。だから今年も10個くらいしか期待できないと思っていたら、予期せぬ豊作でした。。

>私の母は木を植えるのが好きで、事あるごとに木を植えてくれます。実のなる木ばかりです

それ、いいですね!私もこれからたっきーさんのお母様を見習おうと思います。・・・と、言いたいところですが、我が家にはもう木を植えるスペースがありません。実のならない木を切って、実のなる木を植えるスペースを確保していこうと思います。
会津では昔、家に女の子が生まれると桐の木を植えたそうです。そして女の子が嫁ぐとき、その桐の木で、タンスなどを作って嫁入り道具にしたと言います。

>祖母はハランキョウと発音していたように記憶しています

地域や個人によって呼び方は様々ですね!?会津のある人は「サダンキョウ」と記憶していたそうです。

>スモモが大好物でした

いやあ、本当に美味いですからね。今回、李の美味さを再認識いたしました。

2023/07/20 (Thu) 21:44

青っチャン

ジワっと

美味しい李の話と読み進んでいくと,第二節で3.11の原発事故に急展開.
家族と避難を検討されたとのお話しで,事故後家族離散して避難された母子の話を思い出しジワッとしてしまいました.
大震災から2〜3年後の何かの講演会の時,夫と夫のご両親を福島に残し母子で福島県中通りから神奈川県に避難された方の話を聴きました.
その母親は子どもを守るため安全な場所で育てたいと願うが,夫のご両親は福島を離れられないと言い,夫は親から離れられないと家族がバラバラになって子どもを守っているという辛い話でした.
震災被害が軽微ですんでも原発事故が家族を壊してしまう事があるのだと忘れられないお話しでした.

美味しい「さんたろさん」には雑草Zさんの思いと歴史に満たされた味がするのでしょうね.
これから毎年豊作が続きますように.

2023/07/21 (Fri) 19:25

guyver1092

巴旦杏

 私は巴旦杏のことを「はだんきょう」と呼んでいました。興味がわいたので調べてみました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%83%A2

 スモモの品種の名前だったのですね。

https://365good.jp/archives/2988

 上記のページには、巴旦杏は一品種と書かれていますが、スモモ全体の別名のようですね。かなり複雑な紆余曲折を経て、かなり品種が増えているのですね。

2023/07/21 (Fri) 22:02
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: ジワっと

>事故後家族離散して避難された母子の話を思い出しジワッとしてしまいました.

 我が家では、そこまで深刻なことではありませんでした。貯金を下ろして、車に乗って出かけようとした時に、もう少し待機しようと言うことにしました。その時、どこに行こうとしていたかは覚えていません。ただ、西側の新潟方面に向かおうとしていた記憶です。
会津から避難した人もいる一方、浜通りから会津に集団で避難してきた人も沢山います。小中高の体育館や、廃校、旅館に沢山の人が避難して来ました。いまだに仮設住宅に住んでいる人もいます。

>震災被害が軽微ですんでも原発事故が家族を壊してしまう事がある

その通りです。福島県と宮城県、岩手県が東日本大震災の被害の最も大きかった3県ですが、その中では地震と津波の直接の被害は福島県が最も小さかったのに、未だに帰還していない人も多く、原発の為に、復興は最も遅れています。原発は魔の発電装置です。

2023/07/23 (Sun) 00:13
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 巴旦杏

>「はだんきょう」と呼んでいました。

「巴旦杏」の読み方が派生して色々あるのが面白いですね。

ご紹介のwikiのページの品種のところを観たら、「サンタローザ」があって、
>別名「さんたろう」ともよばれる。
と書かれていたので、驚きました。
「さんたろう」と言う呼び方は、彼からしか聞いたことがなく、彼の家とその周辺の集落の人しか使わない名前かと思っていました。実際、彼の家から1kmくらい離れたお寺の友達は、「ばたんきょ」と呼んでいましたし「ばたんきょ」と呼ぶ人は他にも何人もいましたので、一関市の方言は「ばたんきょ」だと思っていました。でも品種「サンタローザ」を、「さんたろう」と呼ぶのは、結構ポピュラーだったみたいですね。
「ばたんきょ」やそれに似た呼び方も日本全国にあるようですし、日本での李の歴史は長く、品種も呼び名も多いのですね。

2023/07/23 (Sun) 00:15
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
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