女性学会ワークショップ発表要旨

コーディネーターだった荻上チキさん(id:seijotcp)、斉藤正美さん(id:discour)が、それぞれの発表要旨をまとめておられるので、私もまとめてみます。ただ、きちんとしたエントリを書く時間がちょっと今ないので、チキさんを見習って、簡単に箇条書きにしておきます。

  • 女性学が抱える問題の象徴として、バーバラ・ヒューストンの「誤読問題」を考えることができるだろう。1)誰もオリジナル文献を検証せず、複数名の学者が孫引きを続けていったのは仲間うちの権威主義の表れ?2)欧米の学者を権威として利用するというストラテジーの失敗、3)東京女性財団のトンデモパンフ自体を批判できず、むしろ乗っかったことで、行政の意識啓発路線プロジェクトに進んで乗った女性学の問題、など。
  • 誤読問題を指摘した山口への女性学者たちからの批判をみてみると、たいていの場合、きちんと引用した、名指しでの批判は避けられ、ぼやかして批判されてきた。批判の内容は、フェミニズムを誤解している、「ジェンダー概念」を理解していないなど、山口が無理解、勉強不足であるという批判や、山口は批判の作法がなっとらんといった、「作法」批判などに収斂されている面がある。
  • 『バックラッシュ!』本で重要な意味をもった、多様な言説の提示という肝心な側面が、評価されず無視されている。
  • 「バックラッシュ」対抗をうたい、「連帯すること」を強要するような言説には問題があるだろう。
  • 女性学が提示してきた「バックラッシュ」「バックラッシャー」理解というものは決めつけが多く、かつ実証研究、調査に基づかない、想像の産物のような側面が大きかったのではないか。
  • マスコミ発信情報に頼り過ぎてきたのではないか。バックラッシュ側の文献、ネット言説などの分析が弱い。
  • ひとえに「バックラッシャー」といっても多様である。いろいろな背景をもつ人たちがいる。
  • 女性学は、内部的にも、外部に対しても、議論を避けてきたのではないか?
  • バックラッシュは2002−2005年に盛んだったが、現在はバックラッシュをリードしてきた人たちも、フェミニズムに関しては興味をかなり失っている状況といえる(それほどまでに、「男女共同参画」が「安全」なものになってしまったのだろう)。また、保守内でも様々な個別論点に関して、多様な意見がある。もっとも極端な主張が典型的バックラッシュの主張とみなされがちだが、実際にはそうとも限らない。