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山村幸広の一日、一グラム

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「かわむら」 牛肉のプロデユーサー 河村太郎 10月6日
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 その店は銀座六丁目にある。カウンター8席の小さな店である。席数で言えば、あの京都の伝説の店、上七軒「ゆたか」を彷彿させる。河村太郎が名店、京都「ゆたか」の東京店料理長の座をすてて、この店を開店させてまだ日は浅い。京都「ゆたか」については以前、このブログでも紹介しているのでそちらを参照していただきたい。

 彼の肉料理を食べるたびに、赤坂にあった最高級ステーキ店の「オリンピック」を思い出す。彼は最高級の牛肉だけを仕入れる。そして最高の状態まで寝かせた後、一番よい状態で客に提供する。今、日本で最も旨い肉の店はどこかと聞かれれば間違いなくこちらをお勧めする。彼は肉を最高の状態で提供する肉の魔術師である。

 彼は牛肉を炭で焼き、白いお皿で提供する。そして絶対にソースを上からかけない。これは彼のポリシーであり理由がある。彼が一番、許せないのは焼いた肉の血が、たとえレアーであっても、切ったときに皿に滲まない事である。それを証明する為に、皿にソースはかけないのである。

 そしてこの店も「ゆたか」同様、すべての料理が完璧である。前菜、サラダ、デザート。何をとっても文句のつけようがない。サラダに二切れほど入っていたレンコンがあまりにもおいしいので聞いてみた。した茹でした後、油で軽く炒めて、わからないくらいに醤油で味付けしてあるそうである。このサラダの二切れのレンコンにここまで手間をかける料理人の姿を伺えば、料理を疑うことはできないであろう。素材が完璧でこの手間である。

 これ以上は無いであろう。

 本日の肉は宮崎産。写真はいわゆる牛の血統書である登記書。鼻もんという、牛の鼻の紋と血統で確認するのである。父母、祖父祖母、生産者まですべて記載されている。正に血統書付の牛である。たまたまご一緒した方が、宮崎出身者の方であったが、「宮崎にこんな肉があったのか」とたいそう驚いておられた。河村氏いわく、「牛はもう産地は関係ない。育て方はもうみんなわかっている。問題は血統である。」

肉はロースが旨い。しかし完璧な肉はヒレも最高に旨い。いわゆる中トロである。そしてヒレは焼く人によって味が大きく変わる。もし河村氏がヒレを薦めてきた夜は完璧な肉である。

 もちろん予約の取りにくいお店である。しかしこうゆう料理人と話をするのはこちらも気持ちがよくなってくる。けしていばらない。でしゃばらない。自慢しない。やっていることだけ正確に語る。肉の最高品を仕入れ、完璧な状態で提供する。日本で最高の肉のプロデユーサーである。

渋谷「小笹」の佐々木茂樹を彷彿させる。年も近い。肉の河村、魚の佐々木である。

本日のワインは上記の2本。河村氏のセレクトである。

山村幸広

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  • by yamamura2004 | 2004-10-06 21:26
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