アイキャッチ・記事内画像撮影:筆者
「居住性が大事=2人用テント」の選択肢にチョット待った!
登山用テントの選び方で重要なポイントに“居住性”があります。中にスリーピングマットを敷いても荷物を広げられるほど余裕のあるテントは魅力的ですよね。
テントの居住性を重視する場合、「ひとりで使う場合でも2人用を選ぶといい」とよく言われています。ただし、2人用テントを選ぶと広々快適に過ごせるものの、床面積が広すぎて落ち着かないという人も中にはいるのではないでしょうか。
筆者がまさにそのひとりで、ソロで2人用テントを使うと広すぎる居住スペースを持て余してしまい、なんだかソワソワして落ち着くことができずにいました。狭さを感じず、かと言って全体的に広すぎない絶妙なサイズのテントはないものでしょうか……。
1人用でも十分広いテントがありました!
そこで、もし筆者と同じ感覚を抱いている人がいたらぜひ教えてあげたいテントが、<アライテント>の「ドマドーム1PLUS」です。
商品名に“1”とあるように1人用として設計されているのですが、後ろに続く“PLUS”というワードがミソで、一般的な1人用テントとは大きく異なる絶妙な居住性を秘めています。
上のイラストがドマドーム1PLUSの間取図。青い部分が肝心の居住スペースで、ほかのテントでは見たことのない変わった形をしているのが分かります。
そして、居住スペースとは別に目に留まるのが、左下の“土間スペース”という謎の空間。これは一体何を表しているのでしょう?
居住性の高さは“フロア”と“前室”に秘密あり!
ということで、フィールドに出てドマドーム1PLUSを実際に立ててみました。どうでしょう、居住スペースと土間スペースがどうなっているか具体的にイメージできますか?
見たことのない”飛び出すフロア”で広々快適
通常、登山用テントの床部分(フロア)は長方形をしているのが一般的なのですが、ドマドーム1PLUSは入り口側の片隅が前に突き出るようにデザインされています。
これにより、スリーピングマットを敷いてもクッカーや水筒、着替えや食料など使わない荷物を広げられるスペースが生まれ、通常の1人用テントより居住性が高く、かなり快適に過ごすことが可能に。
ただし、写真の足元側はフロアの幅が狭まっているので、広い部屋にひとりで取り残されたような居心地の悪さはなく、まさに“ちょうどいい広さ”と言えます。
前室に現れる“土間スペース”が荷物整理に大活躍!
間取図で異彩を放っていた土間スペースは、いわゆる前室と呼ばれるスペースと異なり、居住スペースと切り離されてはいるものの、フロアと同じく丈夫な生地が地面を覆っている作りがポイントです。
例えば、バーナーやガス缶などを外に出しておいたら、底に土や砂が付いて汚れてしまった経験はないでしょうか?
外に出したいけど汚したくない、そんなニーズを汲み取って生まれた空間がこの土間スペースで、バーナーやガス缶のほか、幅を取るバックパックや、汚れたトレッキングポールや濡れたレインウェア、パックカバーなどの置き場としても重宝します。
便利な土間スペースの隣には通常の前室も。登山靴を縦に並べて置いても、まだこれだけの余裕があるので、のびのびと煮炊きを行えます。
使う食材や作り終えた料理を土間スペースに置いて調理したら、さぞかし作業効率がアップすることでしょう。
設営&撤収に時間がかかりそう……を試してみた!
オンリーワンとも言える個性的な特徴をもつドマドーム1PULSですが、ただひとつ、珍しい形ゆえの設営&撤収の手間が気になりました。
果たして設営と撤収にはどれくらい時間がかかるのか。設営は初見で行い、それぞれ時間を計ってみました。
設営時間は約9分。複雑な構造に手こずる結果に……
ドマドーム1PLUSは設営にポールを3本使って立ち上げます。
最初、本体を地面に広げて各スリーブにポールを入れるまではよかったものの、1本目のポールエンドを力任せに間違ったグロメットに差し込んでしまい、非常にいびつな形で立ち上がる羽目に。ここで一瞬パニックになり、あれこれ試すものの上手くいかず……。
手を止めて、冷静にポールエンドとグロメットの位置関係を確認し直したことで今度はスムーズに立ち上げることに成功。それから本体にフライシートを被せて固定、ガイラインを含めて計11箇所をペグダウンしたら設営完了です。
途中で設営に手間取ったため、タイムは9分11秒という結果に。
正直、初見での設営は難しいと感じました。ただ、回数を重ねて設営に慣れれば時間が縮まるのは間違いありません。
今回の結果を踏まえて、購入して一度も袋から出さずに山へ行き、現地でいざ設営しようとすると筆者と同じ目に合う可能性が高いと思われるので、手に入れたら必ず近所で一度試し張りを行うことをおすすめします。
設営時に気づいたグッドポイント
初見での設営は難しいと思ったものの、ほかの多面的なテントと比べると、かなり直感的に設営できるとも感じました。
その理由はポールの長さ。設営で使う3本のポールはすべて同じ長さなので、どのポールをどのスリーブに差し込んでもOKなんです。ポールとスリーブの組み合わせを考えずに済む構造はとても親切だと感じました。
ポールを入れるスリーブの末端は袋綴じになっています。ポールエンドをグロメットに差し込む回数が半分に抑えられている点も好印象。
フライシートの固定には入り口側の左右二箇所を除き、それ以外の4箇所にバックルを採用。固定&リリースが簡単に行え、パーツが大きめなのでグローブをした状態でも作業しやすいのが特徴です。
撤収時間はジャスト5分。手間はほかのテントと大差ナシ
一度設営してしまえば大体の構造は理解できるので、撤収に難しさは感じませんでした。ペグを抜き、フライシート、ポール、本体の順に畳んでいき、すべてを付属の収納袋にしまえば撤収完了。
ちなみに収納状態の大きさは、ポールの長さが38cm、フライシートと本体を入れる収納袋の大きさが直径19cm✕32cm(最長43cm)です。
すべての作業を終えてストップウォッチを止めると、タイムは5分ジャスト。これを手間がかかると見るか、短時間で撤収できると思うかは判断が分かれるところでしょう。
体感では一般的な1人用テントを畳む時間と大差ない印象でした。
撤収時に気づいたグッドポイント
登山用テントに限らず最近の山道具の収納袋は小さいものが多い傾向で、出したものを元に戻すときに苦労した経験はないでしょうか? そのため、ドマドーム1PLUSも同じ目に合うだろうと高を括っていたところ、かなり収納袋に余裕があり、本体とフライシートがするりと中に入っていく様子に感動すら覚えました。
これなら雨で濡れた日や強風時に少々テントを雑に丸めても、収納袋に入れづらいという不快な思いをせずに済みそうです。
テストで気づいたグッド&う〜んなポイント
設営後、テントの中に入ってディティールを確認。感心した特徴と、もう一息と思ってしまった気になる点をそれぞれいくつか紹介します。
これはイイ! 食指が動いた特徴3選
- ギアハンモックを標準装備
- ダブルスライダーで前室を上部から換気可能
- 晴れの日は土間のフライシートを捲り上げられる
①ギアハンモックを標準装備
居住スペースの天井部分には、ランタンやヘッドランプなどを置けるハンモック状の収納スペースが備わっています。通常、この手の収納システムはオプションパーツとして売られていることが多いので、標準で備わっている仕様を見つけたときは、かなり心を惹かれました。
その周辺にはループがあるため、細引きなどを使って物干しを設置することも可能です。
②ダブルスライダーで前室を上部から換気可能
フライシートの入り口のファスナーはダブルスライダーが採用されており、上から開けて内部の換気を促すことができます。フライシートを完全に閉じたい雨の日でも、煮炊きをするときは上部を開けて空気が循環しやすい状態を作れる設計がいいですね。
③晴れの日は土間のフライシートを捲り上げられる
晴れている日はテントの中から外の景色を眺めたいもの。そんなとき土間スペースを覆うフライシートが邪魔だなと思う人は少なくないでしょう。そんな不満が生まれるのを前もって予想していたかのように、土間スペースのフライシートは丸めて固定しておくことが可能です。
これで閉塞感がなくなり開放感がアップ。視野が開け、外の空気を存分に感じながらテント泊を楽しめます。
これはどうなんだろう? 気になる2つの懸念点
- このベンチレーションは果たしてきちんと機能する?
- 仕方ないことだけど、もう少し軽いとさらに良し!
①このベンチレーションは果たしてきちんと機能する?
入り口の対面下部には、ナイロン生地でフルクローズ可能なベンチレーション用のメッシュパネルが配置されていました。ただし、温められた空気は通常上昇するので、ベンチレーションはパネルの中央か、それよりも高い位置に設置したほうが空気は循環しやすいのでは? と感じるところ。
さらに、ベンチレーションパネルの外側は完全にフライシートで覆われてしまうので、これも空気の循環を阻害しそう……。これらの作りから、内側に空気が籠もりそうという印象を受けました。
②仕方ないことだけど、もう少し軽いとさらに良し!
ポールを3本使って設営するため、1人用とはいえ重量増は否めず、ペグやガイラインなどの付属品をすべて含めた総重量は1.94kgでした。ちなみに、自前の同じアライテントの2人用テントを同じ条件で量ってみると、1.81kgという結果に。
100g程度ならペグやガイラインを軽いものに変えれば簡単に軽量化できそうですが、もう少し軽いほうが嬉しいと思う気持ちは拭えそうにありません……。
1人用だけどのんびりできる絶妙なバランスに期待大!
居住スペースに狭さを感じず、かといって広すぎてソワソワする感じもなく、ちょうどいい大きさが魅力のドマドーム1PLUS。前室脇の土間スペースは使い勝手が良さそうで、これまで行ったテント泊の山行を思い返すだけでも、この土間スペースがあったら良かったかな〜と思うことが多々あります。
最近では重たい部類に入る重量が気になるところではありますが、同じアライテントの2人用テントと比べると、その重量差はわずか100g。これは使う側の努力でなんとでもなる重さでしょう。
単純にひとりで使う前提で広くて使い勝手のいいテントを選ぶなら、ドマドーム1PLUSは最有力候補になる予感大。理想が叶って大満足できる期待が膨らむテントと言えそうです。
アライテント ドマドーム 1 PLUS
重量 | 1680g(フライシート+本体+フレーム) |
---|---|
サイズ(設営時) | 主寝室:奥行75(最大135)×間口200×高さ104cm 土間:奥行50cm 入口部分110cm フレーム 38cm |
サイズ(収納時) | 本体32〈43〉×19φcm |
素材 | 本体:28dnリップストップナイロン フライシート:30dnリップストップナイロン PUコーティング グランドシート:40dnナイロンタフタPUコーティング フレーム:NSL9フェザーライト(DAC社製) |
カラー | 本体:クリーム フライシート:フォレストグリーン グランドシート:チャコールグレー |
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