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会社に所属していたり、国際山岳ガイドの資格を持っている人もいたりなど、徐々に分かってきたシェルパの様子。
でもやっぱり気になるのは、大量の荷物を一人で担ぐイメージがあるシェルパの強さ。実際にどれくらいの装備を背負って、ヒマラヤの山々を案内するのでしょうか?
シェルパもスゴい。だけど、ポーターもスゴかった!
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シェルパの方って、一人で何キロぐらいの荷物を背負いますか?
ヒマラヤ登山の場合、キャンプ間の標高によっても異なりますが、平均は約10~20キロ。背負う荷物の重さによって給料に差が出るため、力があるシェルパはそれ以上の荷物を背負うこともあります。
日本で雪山をテント泊で登ろうとすると、荷物の総重量は10〜20キロくらいになるでしょうか。
そこまで現実離れした重さの装備を背負っている訳ではないのですね。しかし、あの高所なのでやっぱりスゴい。
あと、麓のトレッキング時はシェルパが荷物を背負うことはなく、ポーターと呼ばれる人が荷物を運びます。
その重さは、約30キロ以上になることもあるんですよ。
それは初耳。荷運び専門とはいえ、背負う荷物が30キロとは相当な力持ちですね。
ちなみに私が今まで背負った荷物は、最も重くて33キロくらいです。救護用具や酸素、個人装備などが入っていました。
やっぱりトレーニングはハードなの?
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家が貧しかったりすると、学校へ行かずに10代半ばから働き始める人もいます。
しかし、すぐにはシェルパとして働くことができないので、若いうちから下積み時代を経て、後にシェルパへと成長するのが一般的です。
体力だけでなく、高度な登山技術も必要とされる職業ですもんね。
私は11歳の時にキッチンスタッフとして働き始め、14歳の時にトレッキングの仕事を開始しました。23歳の時に日本隊と共にエベレストに登頂しています。
おぉ。ちなみに、一年間で何日くらい山に入っているんですか?
半年以上は、遠征やトレッキングで家にいないことが多いです。
日本の登山ガイドや山岳ガイドと似ていますね。
シェルパの強さのヒミツは、やっぱりハードなトレーニングですか?
クライミングやレスキューのトレーニングは行いますが、特別な筋トレなどは行いません。
多くのシェルパは小さい頃から、山から薪を運ぶ、麓で調達した食料を運ぶなどといった手伝いを家でしているので、自然と体力が身についているのだと思います。
子供の頃から続く私生活が、あの強さを作っているのかもしれませんね。
意外や意外、シェルパでも高山病に?
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「シェルパでも高山病になる人がいる」という話を耳にしたんですけど、本当なのでしょうか?
なる人もいますね。高所で生まれ育った人は高山病になりにくいですが、標高が低い地域出身の人たちは高所に弱い傾向があると思います。
シェルパの多くはエベレストがあるソルクンブ地方や、その隣に位置するロールワリン山群の麓で暮らしています。なかでも最も標高が高い場所は、ソルクンブ地方のゴラクシェプ(約5,000m)。低い地域と言っても、2,000〜2,500mの村に住んでいます。
低いと言っても、日本の感覚とはまったく違いますね。
危険な仕事のモチベーションとは?
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当然といえば当然ですが、超人的なイメージのあるシェルパもやはり同じ人間。高山病になることもあるんですね。
しかし、シェルパの職場はヒマラヤの山々。死の危険もある厳しい自然環境で働くモチベーションとは、いったいなんなのでしょうか?
常に危険と隣り合わせのシェルパ
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シェルパの力を借りずにヒマラヤへ登ることは可能ですか?
ヒマラヤ登山に関わらず、トレッキング時でもシェルパとポーターを同行させるよう義務付けられています。国立公園のチェックポストで確認があるため、彼らの同伴をなくして登山することはできません。
義務化されているとは知りませんでした。シェルパやポーターの仕事は、国によって守られているのですね。
しかし、山で働いているシェルパの保険が整っていないなどの別の問題を抱えています。それに、やはり友人が山岳事故で亡くなってしまった時は辛いです。兄弟や友人を山で失った辛さから、シェルパを辞めてしまう人もいます。
常に危険と隣り合わせの状況で、ゲストの為に働いているのがシェルパなのですね。
私の場合、18歳の時、チベット側からエベレストに登るルート工作中に雪崩が発生し、同じ隊の仲間が目の前で流されて帰らぬ人となってしまいました。さらに、それを助けようとした別の仲間がロープで指を切断してしまったんです。
その時に私は何もできず、ただ現場を見ていることしかできませんでした。仕事を辞めたいと感じた辛い思い出です。
一緒に登るゲストによって喜びも違う
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山頂に立った時、その山に登った人だけが見ることのできる素晴らし景色を望むことができます。そんな登山が私は好きです。でも、なかには生活の為に山に登っている人もいますね。
過酷な環境での仕事だと思うんですが、シェルパの仕事のやりがいってなんですか?
やっぱり、ゲストを山頂まで案内して喜ぶ姿と見ることですね。同じ山に登ることもありますが、一緒に登るゲストが違うので、その都度の喜びも異なります。
ヒマラヤの山々に登る人は、それなりの覚悟を持って挑戦していることが多いはず。そのような人々をサポートできた時の喜びはひとしおでしょうね。
エベレストに登った時、下山中の7,800m付近で目が見えなくなってしまったゲストがいました。6,000mまでは固定したロープにつないで下し、以降は背負ったり肩を貸したりして5,200mのベースキャンプまで帰ってくることができたことが、印象深い思い出として残っていますね。
やっぱり只者ではなかった!ヒマラヤ登山を支えるシェルパ達
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高所でも超人的に活動できると思っていたのですが、高山病にかかるなど、実は私達と同じような一面もあったシェルパ達。ただ、彼らが活動するフィールドは、富士山の倍以上も高い6,000m峰が当たり前。しかも、そんな環境で20キロもの荷物を背負いながら、命がけで登山家をヒマラヤ登山をサポートしているシェルパは、やっぱり只者ではないですね。
ラマ・ゲルさん
提供:ラマ・ゲルさん
シェルパとしてエベレストはもちろん、チョ・オユーやシシャパンマなどの著名な高峰に登山者を案内してきた。
長野県大町市にネパールレストラン「ヒマラヤン シェルパ」をオープンさせたり、日本の森林資源の保全活動や子どもたちへ自然の素晴らしさや厳しさを伝える活動も行なっている。
HIMALAYAN SHERPA株式会社 代表取締役、山の日アンバサダー
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