第五巻 身と心――人間像の転変



ここ何年か、「思想」ということがよく分からなくて、それを教えてくれそうな本に遭遇すると手にしております。ここのところは、ぺりかん社の『日本思想史講座』(全5巻予定)と『岩波講座 日本の思想』(全8巻予定、岩波書店)を中心に検討中。


『岩波講座 日本の思想』の第5回配本は、第5巻「身と心――人間像の転変」です。西洋哲学で言うところの「身心問題」にも通じる人間の捉え方、人間観に関わる論考が集められております。


■目次

編集にあたって


I 身心の深みへ――近代的人間像から伝統的身体論へ 末木文美士
 一 近代的人間像の受容
 二 日本の人間観と身体論への視座
 三 仏教における身体論
 四 近世の身体論
 語 身心と生死――人間観の諸相


II 身と心のせめぎ合い


心身把握の歴史的概観――仏教・道教・近世儒教 馬淵昌也
 はじめに
 一 仏教の心身論――宗密『原人論』と禅宗
 二 道教の心身論――葛洪・呉筠の事例
 三 朱子学における心身
 四 陽明学の心身と李材の身重視説
 おわりに


身体と修行 鎌田東二
 はじめに――「日本の思想」としての「身体の修行」の問題系
 一 「身体と修行」をめぐる『古事記』の中の「潜在思想」
 二 日本仏教における身体と修行
 三 「身体と修行」をめぐる日本中世
 四 修験道と能の「身体と修行」
 五 近世の「身体と修行」――身心変容から等身大へ
 おわりに――近現代における「身体と修行」の問題系


性と愛のはざま――近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う 三橋順子
 はじめに
 一 男色と女色は行き来できた
 二 同じに見えたのなら同じなのではないか
 三 やはり川の流れは違っていた
 四 女装・男装だけでは語れない
 五 男でもあり女でもあること
 六 私たちは、いつ、どのように変えられたのか
 おわりに



めぐる時間・めぐる人生――「輪廻とは異なるめぐる時間」の諸相 西平直
 一 「輪廻なきことが真相である」――輪廻という「めぐる時間」
 二 『源氏物語』における「宿世」の「めぐる時間」――世から世へとうけつぐ
 三 『霊異記』の「めぐる時間」――先祖の因果と受け継ぎ、あの世と行き来する
 四 「アルカイックな古層」の「めぐる時間」――反復する(入れ替わる・可逆的な)感覚
 結びにかえて


III 身と心を超えるもの


「血」の思想 西田知己
 はじめに
 一 血をめぐる東西
 二 判官物と曽我物
 三 西洋思想
 四 仏教思想
 五 神道思想
 おわりに


病の思想史 松尾剛次
 はじめに
 一 癩病をめぐる古代の思想
 二 癩病をめぐる中世の思想
 三 近世における癩病観
 おわりに


現世を生きる――近世的死生観の傾向 高橋文博
 はじめに
 一 「地獄に必ず恐れて、御無沙汰申上申な」
 二 「来世之事は、仏祖もしらぬと被仰候」
 三 「其身は楽を極め、わかひ時の辛労を取かへしぬ」
 四 「もとの天に帰る」
 五 「天ニ帰ツテ報命ヲ申サン」
 六 「空シキ父母ノ屍ナレドモ、存命ノ如ク思テ、少シモ是ヲオロソカニセズ」
 七 「祭祀の礼は人道の本なり」
 おわりに


鎮魂のゆくえ――折口信夫のタマフリ・タマシヅメ論から 川村邦光
 一 生の儀礼とタマフリ・タマシヅメ
 二 死の儀礼とタマフリ・タマシヅメ
 三 仏教的儀礼とタマシヅメ
 四 怨霊・御霊とタマシヅメ
 五 「未成霊」とタマフリ・タマシヅメ


古典を読む
 まえがき 末木文美士
 道元『正法眼蔵』 頼住光子
 山本常朝『葉隠』 竹村英二
 西田幾多郎『善の研究』 沖永宜司


■書誌


版元:岩波書店
発行:2013年09月25日
定価:3800円+税
頁数:335+xii
索引:なし


■全巻構成


編集委員 刈部直、黒住真、佐藤弘夫、末木文美士


第一巻 「日本」と日本思想(2013/04、ISBN:4000113119)
第二巻 場と器――思想の記録と伝達(2013/05、ISBN:4000113127)
第三巻 内と外――対外観と自己像の形成
第四巻 自然と人為――「自然」観の変容(2013/08、ISBN:4000113143)
第五巻 身と心――人間像の転変(2013/09、ISBN:4000113151)
第六巻 秩序と規範――「国家」のなりたち(2013/06、ISBN:400011316X)
第七巻 儀礼と創造――美と芸術の原初
第八巻 聖なるものへ――躍動するカミとホトケ


■リンク


⇒岩波書店 > 『岩波講座 日本の思想』
 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/011311+/top.html