â– 



★ドミニック・ルクール『科学哲学』(沢崎壮宏+竹中利彦+三宅岳史訳、文庫クセジュ891、白水社、2005/08、amazon.co.jp)
 Dominique Lecourt, La philosophie des sciences (Collection QUE SAIS-JE? No.3624, P.U.F., 2001)


欧米の科学哲学の歴史をいくつかの固有名と彼らの思考の概要で辿る一冊。さながら科学哲学の思想・文献カタログといった風情で、邦訳書にして160ページほどの紙幅に、200名以上の人名があらわれる(分冊百科全書である文庫クセジュの面目躍如)。


科学哲学のはじまりから、オーギュスト・コント、エルンスト・マッハ、ウィーン学団、ウィトゲンシュタイン、カルナップ、クワイン、グッドマン、ラカトシュ、ファイヤアーベント、ハンソン、トゥルーミン、クーンといった人びとの仕事をつうじて科学哲学の流れを(100ページほどで)概観・紹介したあとで、バシュラール、ピアジェ、カンギムといったフランスの事情(エピステモロジー)にも(50ページほど)筆を割いているのが本書の特徴。


これから科学哲学に触れようと思う読者への入門書であるのはもちろんのこと、少し詳しく書かれた文献案内としても使えるので、科学哲学の領域を歩き回るさいのガイド・マップの一冊としてポケットに忍ばせておくと便利だろう。もし類書を手にしたことがなければ少なくとも200冊ほどの読むべき書物(未訳書を含む)を本書から教えられる。


目次は以下のとおり*1。

・序
・第一章 哲学のなかの諸科学
 1 古代と中世の科学
 2 近代科学
・第二章 科学哲学の始まり
・第三章 「エピステモロジー」という語
・第四章 征服する哲学——オーギュスト・コント
 1 三つの「哲学する方法」
 2 「科学から予測へ——予測から行為へ」
・第五章 危機の哲学——エルンスト・マッハ
 1 機械論批判
 2 思考経済
 3 哲学的テーゼの生理学的「証明」
 4 アトム論争
・第六章 科学的哲学?
 1 ウィーン学団
 2 「新しい論理学」
 3 検証と意味
 4 「形而上学を消去する」
 5 科学言語を純化する
・第七章 論理実証主義に反対するウィトゲンシュタイン——誤解
 1 「神秘的なもの」
 2 言語と論理
 3 言語ゲーム
・第八章 アメリカのウィーン——カルナップからクワインへ
・第九章 帰納の問題
 1 古典的定式化——デイヴィッド・ヒューム
 2 現代的定式化——バートランド・ラッセル
 3 確証の問題
・第十章 予言から投射へ——グッドマン
・第十一章 認識論の自然化?
・第十二章 科学哲学から思考の哲学へ
・第十三章 科学の論理学か、方法論か?
 1 カール・ポパーはウィーン学団の一員だったか?
 2 反証可能性あるいは論駁可能性
 3 進化論的認識論
・第十四章 洗練された方法論——ラカトシュ
・第十五章 告発された方法論——ファイヤアーベント
・第十六章 歴史的要請——ハンソンとトゥルーミン
・第十七章 クーンと社会学的試み
 1 パラダイム
 2 不連続性、実在論、相対主義
 3 科学の社会学
・第十八章 フランスの伝統
 1 科学哲学の歴史
 2 歴史的なエピステモロジー——バシュラール
 3 否定の哲学
 4 「科学が哲学をつくる」
 5 科学者共同体のなかの哲学者
 6 論理学の問題
 7 実験
・第十九章 発生的認識論——ジャン・ピアジェ
・第二十章 生物学の哲学と生物学哲学
 1 区別
 2 バシュラール主義者カンギレム
 3 生命の認識
 4 生気論の問題
 5 系譜と離反
・第二十一章 二つの伝統が遭遇する可能性
・第二十二章 諸科学のなかの哲学


・訳者あとがき
・原著者による読書案内
・参考文献
・人名索引


以下瑣末ながら気づいた点をメモ。


*86ページの「〔クワインによれば〕御論理学は」の「御」とは?


*「参考文献」vページ、「序」【1】『ハイデッガー全集』別巻3の邦訳発行年が「1876年」となっているが正しくは「1986年」。


⇒白水社
 http://www.hakusuisha.co.jp


⇒ウラゲツ☆ブログ > 2005/08/21 > 必読新書!ルクール『科学哲学』文庫クセジュ
 http://urag.exblog.jp/2187426/

*1:ただし原文中のローマ数字はアラビア数字に変えています。