タリバン戦闘員が略奪か、国外脱出求め空港に市民殺到…鮮明な「恐怖政治の記憶」

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 【テヘラン=水野翔太】新政権樹立を目指すアフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンは17日の記者会見で、「国民に危害を加えることはない」「心配はいらない」などと強調した。だが、過去の恐怖支配の記憶が鮮明なうえ、タリバン戦闘員らの略奪なども相次いでいる模様で、市民の間では不信感が広がっている。

■終始柔和

18日、カブールで、武器を手に警備にあたるタリバン戦闘員(AP)
18日、カブールで、武器を手に警備にあたるタリバン戦闘員(AP)

 タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は会見で、国民を「愛国者」と呼んだ。約20年にわたって戦火を交えた政府軍兵士や敵視する少数民族と国土の再建を進める意思を示したもので、米国協力者を含めて「恩赦を与える」と宣言した。

 報道官はこれまで、主にSNSで、殺害した政府軍兵士の数やテロ攻撃の標的を発信してきた人物で、公の場に姿を見せるのは初めて。約1時間の会見中、終始柔和な顔つきを崩すことなく、「市民の安全は保証する」「誰も家を捜索されることはない」などと話し、「国を去ってもらいたくない」と訴えた。

■脱出希望

18日、国外に逃れようと、カブールの空港周辺に集まる人々(本紙通信員撮影)
18日、国外に逃れようと、カブールの空港周辺に集まる人々(本紙通信員撮影)

 しかし、カブール国際空港周辺には18日も、国外脱出を求めて、「2万人以上」(本紙通信員)の人々が押し寄せた。

 警官ラヒム・グルさん(36)もその一人だ。「外国軍が飛行機に乗せてくれる」と聞き、17日から家に帰らず出国の機会を待ち続けているという。タリバンが言う「恩赦」は「信じない」と言い切り、「テレビやラジオがまた自由に視聴できなくなるに違いない。そんなことには耐えられない」と語気を強めた。

 卸売業の男性(31)も「喜捨などを名目に金を出せと言ってくるはずだ」と切り捨てた。

■隔たり

 地元住民によると、メディアを通じて融和姿勢をアピールする報道官の言葉と、現場にいるタリバン戦闘員の行動には大きな隔たりがあるという。

 カブールでは18日、戦闘員が国会議員宅に侵入し、私用車を奪う事件が起きた。北部クンドゥズの警官は18日、本紙の電話取材に「タリバンが政府職員らの自宅で略奪を繰り返している」と明かした。北部マザリシャリフの記者によると、タリバンが政府職員や国会議員を「7~8時間」拘束する事件も相次いでいるという。嫌がらせとみられる。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、タリバンはカブールの検問所で市民のスマートフォンを取り上げ、英語で通信した記録の有無を確かめている。外国大使館などでの勤務実績がないかを調べている模様だ。

■引き継ぎ

 タリバンは政権発足をにらみ、統治開始に向けた準備を始めた。東部ナンガルハル州の「知事」に就くタリバン幹部は16日、政権側の知事を電話で呼び出した。仕事の引き継ぎを受け、公用の装甲車を取り上げたという。知事に仕えた職員は「タリバンから職にとどまるよう厳命された。外国に逃げることもできないし、タリバンの下で公務に就くしかない」と声を落とした。

 一方、崩壊したガニ政権で第1副大統領だったアムルラ・サレ氏は17日、ツイッターで、憲法規定に基づき、自身が暫定大統領になったと主張した。「私は国内にいる」として国民に抵抗を呼びかけたが、呼応する動きは広がりを欠いているとみられる。

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