海面上昇してもEEZは現在のままで…政府が各国に採用呼びかけ、太平洋島嶼国との連携狙う
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政府は、気候変動で海面が上昇しても現在の排他的経済水域(EEZ)を維持できるよう、国連海洋法条約の新たな解釈の採用を各国に呼びかけている。海面上昇前の海岸線を基準とするものだ。国際的な議論を主導し、海面上昇の脅威に直面する太平洋
岸田首相は9月19日、国連総会の一般討論演説で「将来的な海面上昇による海岸線の後退後も、国連海洋法条約に基づく既存基線の維持を支持する」と表明した。条約締結時に想定されていなかった海面上昇に新たな法解釈で対応するもので、首相が国連の場で言及したのは初めてだった。

EEZは条約で、干潮時の海岸線(低潮線)から200カイリ(約370キロ・メートル)以内と定められ、沿岸国に資源開発や漁業などの海洋権益を認めている。海面上昇で陸側に後退した場合については明文規定がなく、国連国際法委員会(ILC)が2019年に研究部会を設け、対応策の議論を続けている。
後退した低潮線を200カイリの基点にすると、EEZの範囲もその分陸側にずれ、外縁の漁場や海底資源の権利が失われる。逆に、元の低潮線を根拠にEEZを固定すれば、本来広がるはずだった公海の範囲が維持され、公海での活動拡大を目指す国が不公平感を抱く可能性がある。
日本政府は今年2月、気候変動による海洋国への影響を最小限に抑えるため、元の低潮線を基準にすべきだとの見解を初めてまとめた。日本は海岸線の長さが約3万5000キロ・メートル(世界6位)、EEZも世界有数の広さを持つ。海洋権益を保護する上で海面上昇への備えは「死活的に重要な課題」(自民党幹部)だ。
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