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パリ五輪のサーフィン男子日本代表に入った稲葉玲王(27)が、読売新聞などの取材に応じた。南太平洋・タヒチで開催される大舞台で、「金メダルを取りたい」と人生最高のビッグウェーブを狙っている。
恐怖心 気合で打ち勝つ
稲葉は昨年4月のジャパンオープン(仙台市)を制し、5~6月のワールドゲームズ(WG、エルサルバドル)に出場。WGでは東京五輪銀メダルの五十嵐カノア(木下グループ)に次ぐアジア勢2番手となる8位に入った。五十嵐がその後、世界最高峰のチャンピオンシップ・ツアー(CT)の出場枠での五輪出場を決めたため、日本の2枠目が回ってきた。
パリから約1万5700キロ離れた本番会場のタヒチ・チョープーには、15歳の時に初めて訪れた。世界有数の高い波で知られ、当時は「恐怖で一本も乗ることができなかった」という。だが、経験を重ねた今は乗りこなせる自信がある。
わずかな恐怖心がミスにつながりかねない。必要なのは集中力、そして「気合」だと自らを奮い立たせる。五輪では実力上位のCTサーファー勢に対して、うねる大波が逆にチャンスになる。「一本(いい波に)乗れたら、順位が一気にひっくり返る大会になる」。虎視たんたんと下克上を狙う。
サーフィンが盛んな千葉県一宮町で育ち、父でプロサーファーの康宗さん(58)の指導で子どもの頃から競技に打ち込んできた。10歳代からプロツアーで世界各地を転戦する中、東京五輪後は地元でもサーファーが増え、その影響力の大きさを実感したという。「自分がメダルを取ることで、次の世代にも大きな影響を与えられる」。この競技を自らの活躍で盛り上げるつもりだ。
一方、サーファーとして持ち続けてきた夢もある。「もうサーフィンをやめてもいい」と思えるような、一生忘れられない最高の波に乗ることだ。タヒチでその一本にめぐりあえたら――。自らが輝く姿を思い描いている。
(杉野謙太郎)