町営バス廃止、オンデマンドタクシー導入し乗客4倍超に…住民「移動範囲広がった」
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町営バスを廃止した徳島県神山町が昨年4月に始めたタクシーを活用したオンデマンド型公共交通サービスが成果を上げている。乗降場所を専用アプリで予約し、8000円を上限に利用料金の85%を町が補助する仕組み。今年2月末までの利用回数は1万5000回で、バスの1年間の乗客の4倍以上となっている。(北野浩暉)
用途や回数制限なし
公共交通サービスは「まちのクルマ Let’s(レッツ)」。電話か、町とイツモスマイル(徳島市)が共同で開発したアプリ「さあ・くる」を通じて町内に3社あるタクシー会社を予約する。初乗り運賃は650円で、乗車場所と目的地のいずれかが町内であれば15%の個人負担で乗車することが可能。自宅からの外出や帰宅にも使用することができる。
町は1972年から運行していた町営バスを昨年3月末で廃止。同4月から、レッツをスタートした。用途や回数の制限はなく、複数人で利用する人も多い。町営バスの2022年度の利用回数約3400回と比べると、4倍以上になるという。
同町の男性(90)は一人暮らしで、週1、2回、病院や買い物に行くために「レッツ」を利用している。これまでは町営バスなどを使っていたというが「家の前まで迎えに来てくれるし、ちょっとした移動もしやすくなった。おかげで移動範囲も広がった」と喜ぶ。
GPSで料金算出
タクシー各社はレッツの開始に合わせて新たな乗車システムを導入しており、町民は乗車時にマイナンバーカードを使って認証を行う。
3社のタクシー12台に加え、町内の移動には「自家用有償旅客運送制度」を活用した町有車6台が運行。町有車のシステムには、全地球測位システム(GPS)で距離を計測して料金を自動で算出する機能がある。利用客は車内で運行情報や料金を確認することができ、予約や運行記録がサーバーでデータ管理されているため、タクシー会社の事務作業効率化にもつながっているという。
サポートも充実
神山町神領には、専用アプリのサポート窓口「さあ・くる神山ラボ」が設けられている。イツモスマイルの社員らが常駐し、町民にアプリの操作方法の説明を行っているほか、タブレットなどデジタル機器の講習会を開催している。
同社の大田仁大社長は「多くの町民の利用によって蓄積されたデータを活用することで、全国各地でもオンデマンド交通を展開することができる」と語る。
町の初年度の事業費は約9100万円。町住民課は「レッツは地域の重要な足になるとともに、これまでバスを利用したくてもできなかった人のニーズの掘り起こしにもつながっている」と説明。24年度も昨年度並みの利用を見込み、8900万円の事業費を一般会計当初予算に盛り込んでいる。