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奈良県の山下真知事が表明した五條市の県有地での大規模太陽光発送電施設(メガソーラー)の整備計画が議論を呼んでいる。計画浮上までの経緯に不透明な部分があるほか、突然の計画表明に地元が激しく反発し、知事との対立が深まっている。開会中の県議会でも大きな争点になる可能性がある。(前川和弘)
折り合いつかず
「ふざけるな」。2月19日夜、五條市であった住民説明会で「計画変更に法的な問題はない」とする知事に怒号が飛んだ。それでも知事は「災害時に電力を供給するすばらしい案だ」と主張。元地権者の男性は「大事な土地を手放しているのに人をバカにしたような言い方だ。一歩も引けなくなった」と憤る。
元は滑走路を備えた防災拠点を整備する計画だったが、知事が就任後に見直し。今年1月、ヘリポートなどと約25ヘクタールのメガソーラーを整備すると表明した。
これに地元が反発し、市や県議会にメガソーラー案の撤回を求める要望書を提出。知事自ら説明会で、メリットや安全性、防災目的での整備を説明したが、折り合いがつかなかった。
リスク防ぐ条例も
メガソーラーを巡っては災害リスクや環境への影響を指摘する見方が広がっており、住民らもそれらを問題視する。平群町では、災害リスクなどを懸念した住民と事業者の間で訴訟に発展。開発許可の取り消しを求め、県も提訴された。
県はこうした事態を防ごうと、昨年10月に太陽光発電施設の規制条例を施行。5000平方メートル超の施設、急傾斜地など災害リスクのある場所への建設は、知事の許可を必要とした。条例は「住民の理解を得るように努めなければいけない」とも定めている。
知事は脱炭素の加速や非常用電源の確保を整備理由に挙げ「(用地の)ほとんどが平地。平群町のような懸念はない」とする。
大きな課題
メガソーラーの整備が浮上した経緯も不透明だ。2月21日の県議会特別委員会では、関係資料が示されるなど説明が行われた。
環境部局は昨年8月、予定地を脱炭素に向けたメガソーラーの候補地に加えるよう指示があったと説明。一方、防災部局の資料によると、昨年12月の知事との会議で、担当者が「(予定地で)中核的広域防災拠点の整備を進めたい」と提案。知事からは「既存施設の活用を含めて引き続き検討」と指示されていた。
この時点で防災目的での整備案は示されておらず、会議後に決まったという。知事がどう検討し、決めたのかは分からずじまいだ。
新年度予算案にメガソーラーの関連費は盛り込まれていないが、五條市の県有地での防災受援体制の検討費が計上されている。知事は今後も説明を行うとする一方、「一致点を見いだすのは難しい。反対があっても事業は進める」と厳しい姿勢だ。議会説明で、地元住民を含む県民の納得できる形になるか。知事にとって大きな課題になった。