開心術の合併症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 02:22 UTC 版)
ここでは心停止・人工心肺の使用に起因する合併症について列挙する。 術後心不全 大動脈遮断・心筋保護下の開心術では、心内操作が終わったところで遮断解除して冠血流を再開させる。これにより心臓は拍動を再開するが、もとの心機能に回復するには少なくとも数日間は要する。術中の心停止時間が長ければ長いほど術後心不全は重篤になる。この期間を乗り切るために通常強心剤、血管拡張薬、利尿薬などの投与が必要になる。 出血 人工心肺の血液凝固による回路の閉塞を防止するために、送血管・脱血管の挿入の前に抗凝固薬であるヘパリンが投与される。これは人工心肺離脱の際にプロタミンによって中和されるが、完全に凝固機能が元に戻る訳ではない。また、人工心肺回路を血液が通る時に凝固因子が破壊されることもあり、術後は出血が止まりにくくなる。心タンポナーデに陥り手術室に戻って再開胸・止血を行うのも珍しいことではない。 脳神経障害 開心術は非開心術に較べて、組織片による微小塞栓や空気塞栓による虚血性脳障害を起こす可能性が高い。送血管・脱血管などのカニューレの挿入、あるいは大動脈に遮断鉗子をかける時に動脈壁の硬化性病変が剥がれ落ち、その破片が血流に乗って塞栓子となり脳梗塞を起こしたり、また人工心肺回路中の空気が原因で空気塞栓を起こすことがある。心臓手術で明らかな脳神経障害を起こす確率は、これまでの報告によれば非開心術(オフポンプ冠動脈バイパス術など)で 2~6%(2000年, Llinas R, et al.) であるのに対して開心術では4.2~13%(1996年, Nussmeier NA, et al.) である。 不整脈 開心術により刺激伝導系に与える影響から、術後不整脈が起こることがある。場合により一時的ペースメーカー、あるいは恒久的ペースメーカーの留置が必要になる。 その他の臓器障害・感染症 開心術は人工心肺により、通常の拍動性の血流とは異なる非生理的な循環が行われる手術である。その非生理的血流が影響して術後肝不全・腎不全などの臓器障害を招く可能性がある。また体力的にも大きな負担となり、免疫力の低下から創部や肺など種々の感染症を起こしやすい。
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