海岸堤防
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:27 UTC 版)
「防潮堤」も参照 津波・高潮・高波の被害を防ぐために海岸に沿って設けられる堤防は海岸堤防とよばれる。海岸堤防の高さは計画高潮位(異常潮位の際に想定される潮位)に波の影響を考慮した高さを加えたもの以上に設定される。波による浸食や越波に耐えうるよう、河川堤防よりも強固な構造となっている。また、海岸堤防には浪波による越波を減少させ、侵食による土砂の流出を防止するという役割も備えている。 また、津波等に備えて特に高く頑丈に造られた堤防を「津波防波堤」または「防浪堤」と呼ぶ。高さ5 - 7 mメートル程度のものが一般的であるが、岩手県宮古市田老地区(旧田老町)の田老の防潮堤は特に高く、その高さは10 m、長さは2.4 kmに及び、別名「田老万里の長城」として観光名所にもなっていた。この田老地区の堤防は1960年チリ地震の津波をはじめとする幾つもの津波被害を防いできたが、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の津波を防ぐことはできなかった。2011年3月11日に起こったこの地震により、被災6県(青森県 - 千葉県)の約300 kmの範囲で多くの被害をもたらした。それにより、「海岸保全施設等の施設については、設計対象の津波高を超えた場合でも施設の効果が粘り強く発揮できるような構造の技術開発を進め、整備していく必要がある」という『粘り強い構造』の考えが導入された。この考えは河川堤防にも導入されている。 海岸堤防は一般的に、盛り土の表面をコンクリートで被覆して造られている。さらに近年竣工された海岸堤防の一部には、植栽のために盛り土がされている。このような造りは費用がかかりすぎるというが問題も発生している。 一方で岩手県の下閉伊郡普代村や九戸郡洋野町においては、東北地方太平洋沖地震においても高さ15.5 mの普代水門(1984年完成)や太田名部防潮堤(以上普代村)、高さ12 mの防潮堤(洋野町)が決壊せずに津波を大幅に減衰させ、集落への人的・物的被害を最小限に抑えることができた。普代村では東北地方太平洋沖地震において被災した民家は無く、死者はゼロである。
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