このニュースを最初に聞いたとき、直感的におかしいと感じた。
直感的と言ってもそれなりに根拠はある。とにかく、冷静に考えれば考える程この件はおかしな事だらけだ。要領を得ない民主党の言い分も含め、ツッコミどころ満載。
とりあえず思いつくままに列挙してみよう。
1.そもそもなぜ「メール」なのか
この疑問が私の中では一番大きいし、この1点だけでこれが「ガセ」だという確信に近い思いがある。
私自身、業務で頻繁にメールを利用しているが、その利点は言うまでも無い。「言質が残る」という点である。メールで残しておけば、後になって言った言わないと揉め事になる事が無い。逆に言えば、言質を残したくないやりとりにメールを使う事は個人的な感覚から言ってちょっと有り得ない。
自分が送信メールを削除したところで、相手には残る。万が一削除し忘れるリスクも考えれば、電話の方が遥かに安全だし理に適っている。
自らメール活用本を書き、電子メールの仕組みも熟知しているであろう堀江被告がその特性を理解していないはずがない。
表に出せない多額の金の受け渡しをメールで指示して銀行振り込み??
トレーサビリティ高すぎwww。
平均以上の知能があれば、指示は電話もしくは直接口頭、受け渡しも現金の直接授受だろう。
2.「関係者」など存在し得るか
報道によれば、民主党永田議員は記者会見で情報入手先に関して
「関係者からある記者を通じて入手した」
と発言している。
ちょっと待った。ライブドアの社外秘文書などであれば話はわかるがこれはメールである。私信である。基本的に送信者と受信者以外の目に触れる事は無いはずだ。メールの内容を考えればなおの事。それともライブドアは上司や同僚のメールを自由に閲覧したりプリントアウトしたり出来るほど超オープンな会社だったのだろうか。
プリントアウトの内容を見てもスニッフィングされたものなどではなく、明らかに「受信メーラ」から印刷したもの。「とりあえず関係各位にもカーボンコピーしておくか」なんて内容のメールではないのも明らかだ。そもそも、堀江被告とその側近のPCはとっくに検察特捜部が根こそぎ押収している。
そう考えていくと有り得る可能性としては、「関係者」=「メール受信者」で、その人物は3000万もの多額の裏金の送金を指示される程堀江被告から信頼され、東京地検特捜部さえその存在に気付かないほど表舞台に出ていない人物という事になる。そんな人物がなぜか危険を顧みず「ある記者」を通じて民主党に接触してきたのだろうか??
3.なぜ「X-Sender」「X-Mailer」が黒塗りなのか
民主党が公開したメール内容のpdfがこちら。
なぜか「X-Sender」「X-Mailer」が黒塗りになっている。報道によれば、永田議員が入手した時点で最初の3行はすでに塗りつぶされていたらしい。
て事は。
まず大きな問題として、民主党はこのメールを紙ベースでしか確認していない事が判る。しかも最初から「X-Sender」「X-Mailer」が黒塗り。もうなんと言って良いのやら。既に眉は唾でベトベトだ。
だいたいX-Sender やX-Mailerの様な「メールヘッダ」情報を隠す意味が全く判らない。思い当たるとしたら、そこに「ガセである証拠」がある事くらい。
メールヘッダ一覧 を見ていただければ判るが、X-Sender(Senderと同義と考えて良い)は「実際の」差出人のメールアドレス、X-Mailerは使用したメールソフトの情報だ。経路情報ならまだしも、「実際の差出人アドレス」と「使用メールソフト」が何故か黒塗りなのだ。メールヘッダー情報は機械的に付与される情報なので、受信者の特徴などが読み取れるはずも無い。
差出人アドレスが隠されているのは、そこに堀江被告のアドレスが記載されていないから。メールアプリケーションが隠されているのは、そのアプリケーションを堀江被告が使っていない可能性があるからだ。そうとしか考えられない。それ以外の理由が考えられるなら是非教えて欲しい。
4.本当に情報提供者に身の危険が迫っているなら即刻公表すべき
仮に民主党の主張が真実だったと仮定しよう。
メールの文面に「前回振り込んだ口座と同じ」という記述があるのを見ても、指示を受けた人物は、継続的にこの手の仕事を担当していたはずだ。そして「シークレット・至急扱い」な仕事に関与する人間が大勢いるとも考えられない。
だとすれば、いくら名前を塗りつぶしたところでそのメールが公表された時点で誰が裏切り者かは当事者間ではバレバレだろう。
現に永田議員も「情報提供者が脅迫されている」と証言しているのだから間違いない。
つまり、現在「民主党への情報提供者」が誰なのか、「危害を加えようとしている者」だけが把握している状態なのだ。危険この上ないし、最早情報提供者を隠蔽する理由は無い。むしろ、情報提供者が誰なのかを公表し、世間の注目を集めた方が「危害を加えようとしている者」は手を出しづらくなる。
公表した上で警察に保護を求めた方がよっぽど安全だ。今のままだと、その情報提供者に万が一の事があってもマスコミや世間はその事に気付く事ができない。
民主党は、取り返しのつかない事態が起きてから公表するつもりか?そんな事になればそれこそシャレにならない大失態のはずだ。
要するに、民主党の言い分は全く理に適っていないのだ。
テレビの報道をちらっと見た限りでは、他にも
「シグネイチャが通常の堀江氏のメールと違う」
「文面が堀江氏の文章っぽくない」
といった指摘もされているようだ。
小飼 弾氏も同様の指摘をエントリー で書かれている。
もしかすると今後新たな展開があるかもしれないが、上記4つの疑問が解明されるかよく見極める必要がある。その可能性は極めて低い気がするが。
[追記]
2ちゃんねるを見てみると、いろいろ面白い指摘があった。しかし、ちょっと捏造の証拠として弱い気もする。essaさんも既に取り上げているが、指摘は主に4点。
- 堀の中の出の部分が違う。掘のと一緒。
- メーラーの行揃えから考えると頭になにか文字が入ってる可能性は低い→掘の字確定
- X-Senderのeとrが何故か全角に。偽造確定。
- Eudoraで、To:> From: の順になるのは、Mac版だが文面フォントはwinのMSPゴシック。
これ以外に、シ―クレットの「―」が「ー」じゃないなどの指摘もあった。
これらの指摘が証拠として弱いと判断した理由は、元コピーの歪みにある。
あらためてメールのpdfを画像にしてみた。
メールプリントアウト画像
よく見ると、上の罫線が傾き、直線がかなり歪んでいることが判る。これはおそらくFAXされたものだ。
直線がこれだけ歪む様なFAX文書を元に、「堀」の造りの微妙な凹凸や、プロポーショナルフォント「e」の半角全角を見定めて断言するのはちょっと危険だ。
もちろん「ガセ」だという結論は異議なしだけど、どんな情報も冷静に検証する必要がある。
ただ、最後の署名で「堀」の左半分が消されてるのは、明らかに違和感があるし、その点については誤字である可能性は高いと思う。EudoraのMac版だという指摘も唸った。こういう時の2ちゃんはスゴイというのは同意。