今回は「志望校」について。何となく一年中使っているこの言葉、あまり深く考えずに「志望校」と言っていますよね。
新4年生になって初めて中学受験塾の門を叩いたあの日、口に出すかどうかは別にして頭の隅に浮かんだ学校があったはず。それこそ、「志し望む学校」だったのです。
新6年生になったあの日、今度は口に出して言った学校があった。しかし、そこまで自信がない。これは「希望校」ですね。
そしていま、受験を間近に控え「出願校」を考えていることでしょう。首都圏の場合は、1月に受験し、2月にも受験する。しかも、2月は午前も午後も受験するという人もいる。結果次第でここは受ける、ここは受けないと様々な場合を想定しておかなければいけないでしょう。
ここで2つのことをお伝えしたいと思います。1つ目は、入学試験はかなり疲れるために本命の日に燃料切れにならないようにすること。午前と午後の連続はかなり過酷です。
秋の模試で練習しましたからという親御さんがいますが、ご自身でやってみたらわかります。過去問2年分をぶっ通しで解くと最後はもう5点10点なんてどうでもよくなります。早く終わりたい、それだけです。
2つ目は、「ダブル出願」や「受けないかもしれない出願」のお金を無駄と思わないこと。当日受付の学校もありますが、移動だけでもうふらふらになります。確かに大きなお金ですが、中学受験塾に通い始めてからその日までの中で、一番有効なお金です。
今までずいぶん無駄をしてきたでしょうから、最後くらいは思い切りましょう。今はネット出願の時代ですから決済ボタンを押すだけです。超カンタン。金銭感覚を麻痺させていいのはまさにここなのです。
今日は安全校、ここはさすがに落ちないだろうという2月1日の午後受験を落としてしまうことって、本当によくあるのです。特に緊張感を保てない子がそうなります。
じゃあ、午前は受かっているのかというと、そこを背伸びして選択してしまっている。そこで慌てて予定を組みなおすわけですが、このとき、おそらく当の本人は「今日も寒いなあ、夕食はまだかなあ」という調子でしょう。のんきなものです。小学生ですから。
それから、〈受験は朝早く始まるのでそろそろ朝型に変えておかなければいけない〉という親御さん、それは合格圏内の子がやることです。
ボーダーラインやチャレンジ組は朝型に変えるメリットが何もない。そもそも大勝負の前夜は熟睡させることからはじめます。朝起きて試験場の近くまで来るともう受験生がいっぱい。ここで緊張しない子なんていません。眠気が来るはずない。
本番3日前は22時か23時に寝て、2日前も23時まで寝て、1日前だけ22時に寝たとしましょう。6時間ほど寝たらもう十分。「だって、うちの子は睡眠不足に弱いから……」という前に、学力が弱いんです。届いていないんです。ぐっすり寝ている場合じゃないんです。
それよりも、1問でも2問でも多く問題を解くこと。直前に問いた問題がもし出題されたらどうします? もうこれ受かってしまうかもしれませんよ。最後の1か月、最後の2週間で偏差値5くらいは吹っ飛ばしてしまうかもしれない。寝ている場合でしょうか?
そうですよね、普通は寝ません。中学生のお兄さんお姉さんがいるご家庭ならわかると思いますが、小6と1歳しか変わらない中学1年生が、定期テスト前は連続して徹夜したりします。テスト期間は3日とか4日とかありますから、朝まで勉強してそのまま覚えているうちにテストして、帰ってきてちょっと寝てからまた徹夜。こんなことをしています。
「定期テストが近いから朝型に変えよう」なんて言っている中高生はいません。確かに体調管理は重要です。でも体調万全で落ちてくるくらいなら、私なら攻めさせます。
ここで人生を変えて来いと――。
筆者紹介
桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。