「イベントで3回連続誰も来なかった」描きたいものとやる気さえあれば一人でも続けることは可能/カレー沢薫の創作相談
文/カレー沢 薫
宣伝も交流もせず、イベントで3回連続誰も来なかった
遅い。
あまりにも痛みを感じるのが遅すぎやしないでしょうか。
読んでもらえない、感想をもらえないというのはプロアマ問わず創作者が感じる共通の痛みであり、これが致命傷となって創作をやめる人も少なくありません。
例えXに投稿した落書きであろうとも、2いいねしかつかなければへこみますし「シャドウバン」という呪文を唱えて自分を落ち着かせる日々です。
まして同人誌というのは、労力に時間、さらにお金までかけた我が子同然の存在といっても過言ではありません。
それが見向きもされないとあれば、親がレジの順番を抜かされ続け、カゴを持ったまま棒立ちしているのを見たかの如き名状しがたい痛みを感じることでしょう。
つまりあなたが3回ほど経験したものは常人が「トラウマ」と呼ぶものであり、普通3回も耐えられるものではありません。
あなたはまず自分の異常なタフさに自信を持ってください。私は今3発銃弾を受けた人に「救急車か警察を呼ぶべきでしょうか? こんなことで呼んでいいのか自信がありません」と相談されているかのような恐怖を感じています。
おそらく読者の多くが私ではなくあなたに「その強靭なメンタルはどこからきているのか」を聞きたがっていると思います。
席は譲るからあとはお前がやれ、俺は疲れたから帰って寝る。
しかし、さすがのあなたもこめかみに鉛玉を3発食らったことにより「なんか何もやる気起きねえ」という、風邪の初期症状みたいなダルさを感じていらっしゃるようなので、今の内に早めのパブロソしておいた方が良いような気もします。
感想や交流は本当に必要なのか
創作者に一番効くおクスリと言えばやはり「感想」を思い浮かべますが、そもそも感想や交流というのは創作にとってマストではなく、描きたいものとやる気さえあれば一人でも続けることは可能です。
しかし、創作は基本的に過酷なため、肝心のやる気を維持するのが難しいのです。
よって多くの創作者は感想や交流などの「補給」でモチベーションを回復しようとし、それを多く得るために熱心に「宣伝」したりもするのです。
あなたも感想という絆創膏で頭に空いた風穴を塞ぎたい、というのであれば、宣伝はちょっと、などと眠たいことを言わずにXで朝昼晩宣伝ぐらいはやっていきましょう。
見てくれと言えるだけの自信がなければ「〇✕の学パロ書きました」など、事実のみを復唱しつづければ良いのです。
しかし、あなたはすでにイベントに三連続無補給参加という登山家みたいな挑戦をして達成してしまっているのです。
つまりあなたは元々感想や交流などの補給を必要とせず、イベントの空気だけ吸って創作を続けることができるダイオウグソクムシみたいな性質を持っており、もはやこれは生まれながらのギフテッドとしか言いようがありません。
むしろ、補給なしで長距離運転できるあなたが、必要かどうかさえもわからない反応のために、宣伝や交流の方に気を逸らしてしまう方がもったいないし、危険な気がします。
創作活動で一番大事なのはもちろん創作することなのですが、創作の燃料のつもりで補給した反応や感想が甘美すぎて、つい意識がそちらにばかり向いてしまうことも多いのです。
そうなると、自分が何を描きたいかではなく何を描けば反応してもらえるかを考えるようになりますし、内容ではなく、Xに投稿する際に使う「〇〇が××する話」などのバズマンガ構文を考える方に知恵を絞るようになります。
もちろんブクマやいいね数に一喜一憂しますし、自分の数字が気になれば他人の数字も気になるようになり、自分より伸びている同ジャンルの人間にいらぬ嫉妬を抱くようにもなります。
当然ですがこの状態は非常に疲れるので「創作のモチベを高めるための感想を得ようとしてやる気も元気も失う」というよくわからない結果に陥りがちです。
元々強靭なメンタルを持ったあなたなので、そうなったとしても37度2分程度の微熱で済むのかもしれませんが、そんな時間の無駄はしないに越したことはないでしょう。
創作だけに集中できるなら集中した方がいい
創作者の多くが反応だの比較だの嫉妬だのと「他人」を意識せず、自分の書きたいものを自由に書きたいと思っているものです。
私だって読者の反応とか本の売上とか気にせず「俺の本が置いてねえ本屋の空気うめえ」みたいなモチベでマンガが描ければどんなに楽だろうと思います。
しかしそれが出来ないから1日1万回怨嗟のエゴサーチを行い、その道中で他作品のアニメ化発表に被弾して余計やる気をなくすという愚行を繰り返してしまうのです。
そんなことしなくても描けると言うならやはりそれは才能なので、その点に自信を持ち、これからも宣伝や交流などに気を取られず創作に集中していただければと思います。
それでも交流がしたくなった場合は、まず「イベントのスペースに3回連続誰も来なかった話」をしてください。
確実に一目置かれますし乙女ゲーならおもしれー女フラグが立ちます。
創作者としての才能はともかく、あなたが交流に値する興味深い人間なことだけは確かです、どうか自信をもってください。
カレー沢先生こんにちは。いつも先生のウィットに富んだ回答を楽しく拝見しています。
さて本題ですが、私の悩みは自信がないことです。
自分は即売会の雰囲気が大好きでイベントに参加するのですが、マイナージャンルのため誰もスペースに来ません。
先日参加したイベントにも誰も来ず、ついに3回連続で誰も来ないという状況になりました。
同ジャンルの人と交流もなくその上マイナージャンルのため、誰にも見てもらえないと分かっているので交流したり宣伝したりすれば少しはマシになると思うのですが、自分は相手にとって交流する価値に値するのか、自分の書いた作品は他人が読むに値するのか、と考えるとそうではないと思ってしまって交流したり宣伝したりする気持ちになりません。
その状態でわざわざ新刊作ってイベントに出る意味ってあるのかな、と最近思うようになりました。
自分の書いたものを「見てみて〜!」と言える人たちが羨ましいです。
ひとりでも楽しくやっていくんだ! という強い気持ちにもなれず、かといって友達を作ったり宣伝したりする気持ちにもなれず……。どっちつかずの状態が辛いです。どうしたら良いでしょうか?