「TUBEFIRE」著作権問題 レコード31社に2億3千万円請求されたミュージックゲート・穂口雄右氏に聞く
作曲家・穂口雄右氏。現在は、活動の拠点を米国に移している。 |
- Digest
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- 2つの視点-著作権問題と高額訴訟
- 提訴の前提事実
- 「ダウンロード」という誤解
- YouTubeの著作権保護システム
- TUBEFIREの著作権保護システム
- 違法ダウンロードの多発
- 世界のソニーはどこに行ったのか?
- CDの売り上げは14年で62%減
- ソニーの勇み足?
- TMIへ元知財高裁所長が天下り
キャンデーズのCD、『GOLDEN☆BEST/キャンディーズ』 |
これに対して被告は、キャンデーズの「春一番」、「微笑がえし」などを世に送り出した作曲家・穂口雄右氏。厳密に言えば、同氏が代表を務めるミュージックゲート社である。
日本を代表するレコード会社31社と穂口氏が法廷で火花を散らしているのだ。
--この裁判では何が争点になっているのでしょうか?
穂口--
簡単に言えば、YouTubeに違法にアップロードされている動画を、私の会社が運営しているTUBEFIREが違法動画と知りながら、もしくは知り得たのに複製したかどうか?という点です。さらに、もし複製していたとすれば、それをTUBEFIREの利用者に違法動画と知りながら、もしくは知り得たのに送信していたかどうか?という点です。法的な観点から厳密に言えば、原告の持つ著作隣接権(一部に著作権を含む)の内の複製権と公衆送信権をTUBEFIREが侵害しているか否かが争点です。
【原告・レコード会社31社】
日本コロムビア株式会社、 ビクターエンタテインメント株式会社、 キングレコード株式会社、 株式会社テイチクエンタテインメント、 ユニバーサル ミュージック合同会社、 株式会社EMIミュージック・ジャパン、 日本クラウン株式会社、 株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ、 株式会社ポニーキャニオン、 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、 株式会社バップ、 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社、 株式会社ビーイング、 株式会社フォーライフ ミュージックエンタテイメント、株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ、株式会社ドリーミュージック、 株式会社よしもとアール・アンド・シー、 株式会社ジャニーズ・エンタテイメント、 株式会社ジェイ・ストーム、 株式会社エスエムイーレコーズ、 株式会社エピックレコードジャパン、 株式会社キューンレコード、 株式会社ソニー・ミュージックレコーズ、 株式会社ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ、 株式会社デフスターレコーズ、 エイベックス・エンタテインメント株式会社、 株式会社アリオラジャパン、 株式会社ヤマハミュージックパブリッシング、 株式会社ビーグラムレコーズ、 株式会社ジー企画室、 株式会社バーミリオンレコード
2つの視点-著作権問題と高額訴訟
レコード会社側が問題にしているのは、ミュージックゲートが2007年から運営してきたTUBEFIREというサービスで、YouTubeの音源と画像をパソコン以外の端末でも視聴可能にするファイル変換サービスである。YouTubeと同様に、無料でだれでも利用できる。インターネット広告を収益とするビジネスモデルで、1日のアクセス数は10万件を超える。だたし提訴の後、暫定処置として、自主的に閉鎖された。
穂口氏が請求された金額は約2億3000万円。
しかし、わたしがこの裁判に好奇心を刺激されたのは、単に高額訴訟というだけではなく、レコード会社側がTMI法律事務所に所属する弁護士らを中心に弁護団を形成したからである。そのことにわたしは暗い好奇心を刺激された。
TMI法律事務所は、司法官僚の天下り先で、元最高裁判事3名をはじめ、元検事総長や検察庁検事正が顧問として在籍している。司法官僚の再就職が違法行為というわけではないが、裁判所との人脈を法廷に持ち込める条件があり、公平な裁判という観点から道義上の問題がある。
塚原朋一氏。元最高裁判所調査官、元知的財産高裁所長。現在は、TMI総合法律事務所の顧問。写真は、早稲田大学大学院のHPより。 |
この裁判が該当する著作権問題を扱う知的財産高裁の元所長・塚原朋一氏もやはり同事務所の顧問に名を連ねている。塚原氏は、元最高裁判所調査官でもある。これらの人々の経歴は、事務所のホームページでも公開されており、天下りの実態を確認することもできたはずだ。
が、結果としてレコード会社31社は、巨大な法律事務所の力を借りて、ひとりの作曲家を法廷に立たせたのである。その背景にどのような経緯があったのだろうか?
ミュージックゲート裁判では2つの大きな問題が浮かび上がっている。音楽配信をめぐる既得権の問題と、非常識としか言いようがない高額訴訟の問題である。
提訴から半年。力関係で圧倒的に劣る穂口氏にみずからの主張を展開してもらった。
提訴の前提事実
訴状によると、原告は次のように、訴訟の前提事実を把握している。
1、TUBEFIREはYouTube上にある音源や画像をダウンロードできるサービスである。(黒薮注:TUBEFIREは無料サイトである)
2、TUBEFIREは電子ファイルをサーバーに保存しているので、当該電子ファイルがYouTube上で削除されていても利用者からの要求があれば、電子ファイルを送信することにより、利用者はTUBEFIREのサーバーから、直接、音源や動画をダウンロードすることができるようになっている。
3、このようなサービスをTUBEFIREが提供しているために、レコード会社に損害が発生している。また、「レコード会社やアーティストをはじめとする関係者に適正な対価が還流されなくなり、音楽業界全体にとって極めて深刻な事態となる」。
このような前提で裁判を起こし、穂口氏に約2億3000万円の賠償を求めてきたのである。
「ダウンロード」という誤解
--レコード会社側は音源と画像のダウンロードを問題にしていますが?
穂口--
TUBEFIREはYouTubeに公開されている動画のうち、違法でない動画に限ってファイル変換を提供するサービスです。著作物のダウンロードサービスではありません。
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『1998年をピークとするCD生産減少の推移』(日本レコード協会の統計資料)
『音楽配信売上の推移』(日本レコード協会発表)
『iTunesの売上の変遷』
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作曲者がJASRACを退会し著作権を自己管理/作曲者が代表を務めるミュージックゲート社はYouTube動画のファイル変換サービスを運営/レコード会社が著作隣接権に基づいてミュージックゲート社を訴える
03/06 2012
「TUBEFIRE」著作権問題 レコード31社に2億3千万円請求されたミュージックゲート・穂口雄右氏に聞く:MyNewsJapan
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読者コメント
このサイトを見たのは初めてです
日本の既得権者は、新ネットサービスの成長を潰して来た。結果、多くのサービスで米国の独走を許している。世界ではTUBEFIREのようなファイル変換サイトが順調に成長しているが、この訴訟でこの分野も米国の一人勝ちになる。訴訟ビジネスの日本上陸としても注目したい。ところで、楽曲を使い回して最も潤っているのはレコード会社だ。また、主に人材育成を担当しているプロダクションの育成余力強化が先決だ。
ソニーミュージックなどの一番エグい商売のやり方は、初CD化や未発表曲を入れたベスト盤やCDBOX発売なのだが、それで潤っていた一人が穂口氏なのでは?秋桜やいい日旅立ちとかは同一音源に10回カネ払ったりしたし、ライブもだとさらに5回とか。配信だと重複は防げ助かるが、上前はねるだけのアップルと違い、レコード会社は人材への投資を怠ると売り上げが激減するからなぁ。無料音源入手で育成余力を奪うのは問題かな。
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