事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

外国人・性自認女性トランスジェンダーも支援対象?困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針有識者会議の危うい議論

迂回経路と運用実績が作られるおそれ

困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議

困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議|厚生労働省

ここでは令和6年4月1日から施行の【令和四年法律第五十二号 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律】に基づく基本方針に関して議論が為されています。

これは【困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会】からの継続的な議論と言えるもので、構成員もColaboやBONDプロジェクト、若草プロジェクトなど従前の構成員と似通っています。

女性への支援政策は1956年制定の売春防止法の「要保護女子の保護更正」等を法的根拠としていましたが、困窮・性被害・心身の健康・居場所の確保などの課題への対応には現実との乖離が生じていたため、新法では支援事業を売防法から切り離した上で新たな枠組みを構築。

自治体と民間団体が協働して、①対象女性の立場に立った相談、②一時保護、③医学的・心理学的な援助、④自立して生活するための関連制度に関する情報提供等、⑤居住して保護を受けることができる施設の利用などを行うこととなっています。

また、婦人相談所⇒女性相談支援センター、婦人保護施設⇒女性自立支援施設という名称変更も行われています。

一見すると何ら問題が無い話に聞こえますが…疑問が生じる点がいくつもあります。

外国人も困難女性支援法に基づく支援対象?生活保護の迂回経路の懸念

「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針」についての議論の論点について

支援の対象者について不穏な議論が為されています。

法では、女性は、その性別を理由として性暴力や性虐待、性的な搾取等の困難により遭遇しやすい状況にあることや、予期せぬ妊娠等の女性特有の問題が存在すること、また、これらに雇用形態や経済力等の男女間格差が複合することにより社会的経済的困難を抱えやすい状況にあることを踏まえて規定されたものであり、年齢、障害の有無、国籍等を問わず、本法による支援の対象者となりうる旨を記載してはどうか。 

「国籍等を問わず」とあるように、外国人も本法の対象となるような議論の方向性であるのが分かります。

これは、【生活保護の迂回経路】が作られるおそれを考えざるを得ません。

現在、外国人に生活保護を認めるという明文の法律はありません。生活保護法は、日本国民にのみ受給権を認めています(最高裁平成26年7月18日判決(平成24年(行ヒ)第45号)参考:http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/20038509.pdf

ただ、(「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和29年5月8日社発第382号))(※ 一部改正等についての通知はこちら)によって、「当分の間」外国人に対しても生活保護の決定実施の取扱に準じて保護を行うとされ、これが続いています。

つまり、法律に基づいた行政行為ではありません。

しかし、給付行政であるため、法律の留保・法律に基づく行政の観点からは問題が無いということで、国葬儀の際にも話題になった領域です。

ただし、準用の形を採るにしても、問題がある。

生活保護は行政の側において審査されるものですが、困難女性支援は民間でも実施されます。多くは都道府県や市区町村からの事業委託になるでしょう。

(民間の団体との協働による支援)
第十三条 都道府県は、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体と協働して、その自主性を尊重しつつ、困難な問題を抱える女性について、その意向に留意しながら、訪問、巡回、居場所の提供、インターネットの活用、関係機関への同行その他の厚生労働省令で定める方法により、その発見、相談その他の支援に関する業務を行うものとする。
2 市町村は、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体と協働して、その自主性を尊重しつつ、困難な問題を抱える女性について、その意向に留意しながら、前項の業務を行うことができる。

しかし、有識者会議の構成員であるColaboなどが、都から事業委託を受けている事業報告におけるその杜撰な会計処理について指摘されています。

ガバガバな書類でも許されてる状況で、都は法律上の公告義務のある貸借対照表であるにもかかわらず(Colabo側も公告していなかった不備を認めた)開示請求されたら非開示の扱いをしました。

こんな状況では、きちんと審査できず、制度に悪乗りする者が出てきた際にそれを排除する仕組みがあるとは思えません。

確かに困難女性支援には先述の通り、相談事業・一時保護・医学心理学的援助・自立のための情報提供・居住施設の提供など様々な階層があります。

外国人だからというだけで、全てから排除すべきとは思えません。

しかし、「居住施設の提供」についてはもはや生活保護に近いのであって、この状況下では準用であっても認めるべきかというと、かなり不安があります。

さらに、女性が男性よりも支援が必要であるとする建前である中で、奇妙な方針案もあります。

性自認が女性であるトランスジェンダーも支援対象?実績を作る目的か

本有識者会議では「性自認が女性であるトランスジェンダーにも可能な支援を検討」すべきとする方向性が示されています。

これは行政実務・法律に基づく行政行為での【性自認に基づく扱いの実績を作ろう】としているのではないでしょうか?

行政実務で実績を作ると司法判断にも影響するというのは、同性婚訴訟でパートナーシップ制度が言及されたことと一緒。要するに「外堀を埋める」をやってるわけです。

「可能な支援を検討」と言うならなぜ「男性」は完全に無視しているのでしょうか?

「女性」の中に「トランス男性」が居たら?その際は配慮しないのでしょうか?

「婦人相談所や婦人保護施設の利用が年々減少」と報告もなぜか予算は倍増

「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針」についての議論の論点について

「婦人相談所や婦人保護施設の利用が年々減少しており」とあります。

にもかかわらず、この手の予算は倍増しているという現実があります。

確かに、行政では発見できていない支援ニーズがある可能性は否定できませんし(報告が無いことは被害が無いことを意味しない)、それの発見に民間のNPOや一般社団法人が寄与している側面はあるでしょう。

困難を抱える女性に対して(男性よりも)支援をする必要性はあると感じていますし、全部を撤廃すべきなんて思っていません。

しかし、本当にこの規模の予算が必要なんでしょうか?

各所の報告書を読むと、社会的需要に比して予算が過大なのではないか?という観点がなく、常に予算拡大の方向性で議論が進んでいることに、一国民として強烈な違和感を覚えざるを得ません。

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