IDEスクエア
コラム
著者がベトナムで見つけた、ローカルなイノベーションが詰まった改造農業機械。それらが作られ使われている現場の風景を紹介します。
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第6回(最終回) イノベーションは難しい――藁巻機 / 坂田 正三 今回本連載が紹介するのは「改造品」ではなく、この機械を開発した企業の社長さん曰く、「発明品」である。その機械の名はmáy cuốn rơm。直訳すると「藁巻機」という(写真1)。稲刈り後の稲藁を筒状の塊(ベール)にするための機械である。ベトナム南部では、いわゆる普通型と呼ばれる、回転するアームで稲を巻き込んで脱穀するコンバインにより稲刈りが行われるが、普通型コンバインで稲を刈ると、水田に脱穀後の藁が残る。この藁を手際よく回収することができる機械である。藁巻機を開発したドンタップ省の Phan Tan社が動画で使い方の解説をしているので、参照されたい。 2020/03/24
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第5回 地球にやさしい?農業機械の改造 / 坂田 正三 2010年代半ばに登場した環境分野の新たなバズワードに、「サーキュラー・エコノミー」(circular economy)というものがある。大量生産・大量消費型経済から循環型の経済へ転換していこうという取り組みを推進するため、ヨーロッパ各国の政府や企業が最近よく使っている言葉である。日本も2000年代前半から「3R」(リユース・リデュース・リサイクル)といった言葉を国際的に流通させようとがんばっているが、3Rより幅広い範囲の経済活動もサーキュラー・エコノミーの範疇に含まれているようである。例えば経済協力開発機構(OECD)の文献では、工業生産における原材料やCO2の削減、今流行りのシェアリング・ビジネス(シェアバイクや配車サービスなど)も推奨されている(OECD 2018)。 2020/02/19
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第4回 「適正技術論」と農業機械改造 / 坂田 正三 かつて、「適正技術論」という概念が一世を風靡した時代があった。途上国の経済発展と技術進歩のあり方について論じるものである。余剰労働力が豊富な途上国では、先進国の進んだ技術をそのまま導入することは経済発展に寄与せず、むしろ雇用を奪い、環境を破壊するなどの弊害の方が大きい。途上国には「適正な」、すなわち安価で入手でき、高度な知識を必要とせず、それでいて手仕事よりも生産効率を高める、現地の経済・社会環境に適合した技術が必要とされるという考え方である。 2020/01/27
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第3回 旅する日本の中古農業機械 / 坂田 正三 ベトナムでは、主に日本から輸入された中古農業機械が修理・改造され、農村で使われている。今回は、これら中古農業機械が日本で集められベトナムの農村で販売されるまでの流れを見ていくことにしよう。 2019/12/20
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第2回 適応としての改造 / 坂田 正三 『改良・改造手作り農機傑作集』(トミタ・イチロー著、農文協)という本がある。初版の出版が1992年、2013年に第25刷を発行しているロングセラーである。著者が日本中の農家を歩いて廻り、そこで見つけた農業機械の部分的な、あるいは大掛かりな改造の例がイラスト入りで紹介されており、農業の経験のない本稿筆者にも楽しく読める。さらに、改造で使われる工具の使い方やスクラップ利用の工夫など、読者自身による改造を手助けする具体的な方法も紹介されている。 2019/11/25
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第1回 小さな農業機械化のはじまり――稲刈り機 / 坂田 正三 ベトナム中部、ビンディン省の農村へ行ってきた。ちょうど稲刈りの季節ののどかな農村風景を見ることができた。ビンディン省は、ベトナムの中でも工業化が遅れた地域であり、所得も低く、昔からの変わらぬ農村風景が残っているのは、経済発展の後れの裏返しでもある。 2019/10/23