【日時】2023.1.21.(土)14:00~
【会場】横浜みなとみらいホール
【管弦楽】神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】沼尻竜典
【独奏】神尾真由子(Vn)
【曲目】
①ベートーヴェン『ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61.』
②サンサーンス『交響曲第3番ハ短調Op.78<オルガン付き>』
《楽器構成》
木管楽器:ピッコロ1(3番フルート持ち換え)、フルート3、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット。
金管楽器:ホルン4 (1番・2番はナチュラルホルン、3番・4番はヴァルヴ付き)、トランペット3 (第2楽章では3番トランペットにナチュラルトランペットが指定されている)、トロンボーン3、チューバ1。
打楽器:ティンパニ(3個)、トライアングル、シンバル、バスドラム。
〈オルガン演奏〉
今日のパイプオルガン演奏は、アレシュ・バールタさん、プロフィールの概要は以下の通りです。
<Profile>
チェコの世界的に著名なオルガニスト、欧米での演奏経験も多く、録音ソフトも多数でている。今回みなとみらいホールのルーシー(パイプオルガン名)を初めて演奏します。
【演奏の模様】
①ヴァイオリン協奏曲
既報参照
②オルガン付き交響曲
<楽章構成>
全二楽章(循環形式4部)構成
第1楽章 (第1部)アダージョーアレグロ・モデラート(第2部)ポコ・アダージョ
第2楽章 (第1部)アレグロ・モデラート プレスト (第2部)マエストーソ アレグロ
<楽器編成>
三管編成弦楽五部14型(14-12-10-8-7)
木管楽器:ピッコロ1(3番フルート持ち換え)、フルート3、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット。
金管楽器:ホルン4 (1番・2番はナチュラルホルン、3番・4番はヴァルヴ付き)、トランペット3 (第2楽章では3番トランペットにナチュラルトランペットが指定されている)、トロンボーン3、チューバ1。
打楽器:ティンパニ(3個)、トライアングル、シンバル、バスドラム。
この交響曲はパイプオルガンが備わっているホールでないと、本来の迫力ある演奏は聴けません。幼少時から天才の誉れ高いサンサーンスは、フランス最高峰とも言えるマドレーヌ寺院のオルガニストを務めた経験上、交響曲にオルガンを大々的に取り入れたのは必然でありましょう。
第1楽章の後半や第2楽章の後半でオルガン演奏が入りました。特に第2楽章では、最初から迫力ある大きな音でオルガンが鳴らされ、将に<オルガン付き>交響曲の面目躍如。続くオケアンサンブと織り成す一大スペクタクルは、管弦楽のみの交響曲では決して味わえない、奥深い響きを大ホール一杯に広げていました。交響曲を多く書いたオルガニスト出身ブルックナーでさえ、オルガンをオーケストラと一緒に演奏する曲は無いと思います(すべての交響曲のオルガン版は有りますが)。
今回は昨年11月に同じみなとみらいホールで聞いたN響の同じ曲の時(この時のオルガン演奏は、ホール専属オルガニスト)と較べて、オーケストラのアンサンブルの響きをオルガンの響きが補って余りある、<オルガン付き>の威力を十二分に実感させられた演奏でした。
《参考》
この交響曲は通常の4楽章構造にしたがっているように見えるが、通常の意味での第1と第2、第3と第4楽章はそれぞれ結合されており、2つの楽章に圧縮されていると言うことができる。サン=サーンスはここで、伝統的なスタイルも踏まえつつ、新たな形の交響曲を意図していたのである(1875年の『ピアノ協奏曲第4番ハ短調』(作品44)や、前年に初演された『ヴァイオリンソナタ第1番ニ短調(作品75)』でも同様の構成が採られている)。
また、この交響曲は循環主題技法の創造的な用法を示している。サン=サーンスはフランツ・リストと友人であり、初演直後に亡くなったリストにこの交響曲を献呈しているが、素材が楽曲全体を通じて進化してゆくというリストの主題変容の理論がこの交響曲には適用されている。
第1楽章
通常の交響曲の ソナタ・アレグロ楽章と緩除楽章に相当する。第1部は緩やかな導入部の後、シューベルトの『未完成交響曲』を思わせる弦楽のざわめきによる循環主題(第1主題)がまず現れ、穏やかな性格の第2主題が続く。循環主題の冒頭は グレゴリアン・チャントの『 怒りの日(ディエス・イレ)』と音形が一致している。
第1楽章の第2部では、オルガンに伴奏された弦楽によって瞑想的な主題が提示される。弦によって主題が変奏された後、中間部では低弦のピッツィカートに循環主題が回帰する。大胆な転調を経て主部が再現され、消え入るように終わる。
第2楽章
スケルツォ楽章とフィナーレに相当する。 弦楽器によるエネルギッシュな旋律で幕を開け、変形された循環主題が続く。トリオに当たる部分では木管楽器とピアノが快活に動き回る。第2楽章後半で使われる主題とトリオの楽想が交錯するコーダは徐々に力を失い、循環主題を回想しながら後半に
オルガンの壮麗な響きによって第2楽章の第2部は開始され、4手ピアノの響きとともに長調に変奏された循環主題が奏される。自由なソナタ形式で書かれ、力強いファンファーレやフーガ、田園風の第2主題など、きわめて変化に富んだ展開を経て、力感に富んだ終結部によって頂点を迎える。
なお、オルガン付きのこの交響曲を昨年11月N響が演奏した時の記録を、参考まで文末に再掲(抜粋)しておきます。
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2022 .11.4. HUKKATS Roc再掲(抜粋)
【主催者言】
横浜みなとみらいホール第1回バースデイ・コンサートや開館20周年記念演奏会など、折に触れて大きなプロジェクトをお願いしてきた井上道義をマエストロに、長年横浜定期演奏会を実施し、ホールとの所縁も深いオーケストラNHK交響楽団が登場します。また、ソリストには、東洋人のカウンターテナーとして初めてウィーン国立 歌劇場にデビュー、また2021年からは当ホールのプロデューサーを務めるなど、国際的な活躍が光る藤木大地。ホール所縁あるトップアーティストとともに、 ホールの新たな門出を祝います。
【日時】2022.11.3(木・文化の日)
【会場】みなとみらいホール大ホール
【管弦楽】NHK交響楽団
【指揮】井上道義
<Profile>
ニュージーランド国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督、京都市交響楽団音楽監督、大阪フィルフィルハーモニー交響楽団首席指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督を歴任。2017年大阪国際フェスティバル「バーンスタイン:ミサ」を、2019年オペラ「ドン・ジョヴァンニ(森山開次演出)」を、2020年オペラ「フィガロの結婚(野田秀樹演出)」を、いずれも総監督として率い既成概念にとらわれない唯一無二の舞台を作り上げている。2016年「渡邊暁雄基金特別賞」、「東燃ゼネラル音楽賞」、2018年「大阪文化賞」「大阪文化祭賞」「音楽クリティック・クラブ賞」、2019年「有馬賞」を受賞。オーケストラ・アンサンブル金沢桂冠指揮者。
【出演】
藤木大地(カウンターテナー)、
近藤岳(パイプオルガン)
<Profile>
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学別科オルガン科修了。同大学大学院修士課程音楽研究科(オルガン)修了。これまでに作曲を野田暉行、川井学、永冨正之、尾高惇忠の各氏に、オルガンを廣野嗣雄、今井奈緒子の各氏に師事。
現在、みなとみらいホール専属オルガニスト。作・編曲家としても、国内各地のコンサートホールを中心にオルガンリサイタル、コンサート、レクチャーコンサートなどのソロ演奏活動のほか、アンサンブルやオーケストラとの共演も多数行っている。また、2002年6月には「千年の響き」〜正倉院復元楽器とヨーロッパ伝統楽器が創造する現代音楽〜ヨーロッパ公演(ドイツ、イタリア、フランス、ポーランド)に、権代敦彦作品のソリストとして出演し好評を博した。2004年7月~2006年までミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストを務めた。2006年11月から、文化庁派遣芸術家在外研修員としてフランス(パリ)に留学。パリ・ノートルダム寺院の正オルガニスト、フィリップ・ルフェーブル氏に、オルガンおよび即興演奏を師事。
【曲目】
①J. シュトラウスⅡ世『ワルツ《南国のバラ》 Op. 388』
②マーラー『リュッケルトの詩による5つの歌曲』
③サン₌サーンス『交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」 Op. 78』
(曲について)
カミーユ・サン=サーンスが1886年に作曲した交響曲。サン=サーンスの交響曲の中でも最も有名な作品であり、『オルガン付き』(avec orgue)の愛称で知られる。
ロンドン・フィルハーモニックック協会の委嘱で作曲され、1886年5月19日の初演も作曲者自身の指揮によりロンドンのセント・ジェームズ・ホール(英語版)で行われている。
この作品の作曲について、サン=サーンスは「この曲には私が注ぎ込める全てを注ぎ込んだ」と述べ、彼自身の名人芸的なピアノ
の楽句や、華麗な管弦楽書法、教会のパイプオルガンの響きが盛り込まれている。初演や、翌1887年1月9日のパリ音楽院演奏協会によるパリ初演はどちらも成功を収め、サン=サーンスは「フランスのベートーベン」と称えられた。
【演奏の模様】
①J. シュトラウスⅡ世『ワルツ《南国のバラ》 Op. 388
《略》
②マーラー『リュッケルトの詩による5つの歌曲』
《略》
《20分の休憩》
③サン=サーンス『交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」』
今日はこのサンサーンスの曲がお目当てで聴きに来ました。
<楽器編成(通常)>
Picc. 1(3番フルート持ち換え)、Fl. 3、Ob.3 Hrn. 2、En.Hrn. 1、Cl. 2、Bas Cl. 1、Fg.b 2、C-Fg. 1 Hrn. 4 、Trmp. 3 、Trmb. 3、Tub. 1 Timp.(3個)、Tria. Cym.、Bas Drm.
パイプオルガン、Pf(奏者2人)。
(弦楽五部)14 型
全2楽章、演奏時間は約35分(各楽章20分、15分)に通常は分類されますが、各楽章とも前半後半の区切りがあるので、4楽章構成と見る人もいます。サン=サーンスはここで、伝統的なスタイルも踏まえつつ、新たな形の交響曲を意図していたとも謂われています。
またこの交響曲の最も独創的な特徴は、サンサーンスが各所に、ピアノ(2手もしくは4手)及びパイプオルガンを使用して重厚な響きを織り込んだことでしょう。鍵盤楽器を巧妙に利用したのです。勿論、ピアノだけとオーケストラ、オルガンとオーケストラの例は他にもあるでしょう。しかしそうした曲とは比べにならない程大規模に交響曲にパイプオルガンの豪快な響きを組み込んだのでした。これ程までに大々的に組み込んだ例は他に無いでしょう。サンサーンスはマドレーヌ寺院の専属オルガニストを長年務めた経験を生かしたのでした。しかも幼少の頃から神童、天才の呼び声が高かった彼ですから、オルガンとピアノがオーケストラと織りなす天地も揺るがす程の豪快なアンサンブルとオーケストレーションは見事という他有りませんでした。オケの強奏・全奏にのし掛かるオルガンの重戦車、その周りをキラキラと軽い音の煌めき、あれは一体何の楽器と思わす程軽ろやかに聴こえるのはピアノの音でした。この曲最大の山場は、N響を豪快に引っ張る井上マエストロ、それからみなとみらいホール専属オルガニストの近藤岳さん、ピアニストはどなただったのか配布資料には記載がないので分かりませんが、この三部隊の一致団結した作戦が功を奏した瞬間でした。
もうこれを聞いただけで大満足と思わす(勿論この曲の他の彼方此方でも素晴らしい響きを奏でた)N響の今日の演奏でした。
演奏後、大きな拍手の中、井上さんは、各パート毎に起立させて挨拶、観客共々健闘を讃えていました。その後で、マイクを握って出て来たマエストロは、❝今日のみなとみらいホールの記念演奏会としての演奏は、皆さんに満足して頂けたものと思う。いろいろあったけれども、みんなでみなとみらいホールを今後も支え大きく育てていきましょう❞といった趣旨のことを語っていました。同感の至りです。