HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

エリック・ロメール監督仏映画『冬物語』鑑賞

【日時】2022.8.24.(水)19:15~

【上映館】横浜 ジャック&ベティ

【作品】冬物語(原題:Conte d’hiver)

《四季の物語》の第2作。1989年から90年にかけての冬、ブルターニュ地方モルビアン湾のイル=オ=モワンヌ島、パリ、フランス中部ヌヴェールで、16ミリで撮影されその後完成/1991年/114分/カラー作品のデジタル・リマスター版映画。

【監督】エリック・ロメール(1920-2010) 

エリック・ロメール

 本名ジャン=マリ・モリス・シェレール(Jean-Marie Maurice Schérer)。フランス、ヌヴェル・ヴァーグ映画の最後の旗手と看做される監督。この映画運動を代表する映画人(例えばトリュフォー、ゴダール、ジャン・ポール・ベルモンド等)のうちでは名声を確立したのが最も遅い。                 

 大学で文学を専攻し、1942年に文学教師の資格を得て、パリのリセで教鞭をとる(古典文学教授)。その傍ら映画評論を執筆。1951年、バザンらによって創刊された同誌に寄稿しはじめ、後に6年間編集長をつとめる。  

 男女の恋愛模様を軽快なタッチで描く一方、文芸作品などにも取り組む。今回の「冬物語(1991)」は、「春のソナタ(1989)」「夏物語(1996)」「恋の秋(1997)」と共に『四季の物語』としての一連の作品群の一つで、1992年ベルリン国際映画祭で金賞を受賞した作品です。

 

【出演】シャルロット・ヴェリ、フレデリック・ヴァン他

         


【粗筋】                                

 フェリシー(シャルロット・ヴェリ)は夏休みにブルターニュ地方の島で出会ったシャルル(フレデリック・ヴァン・デン・ドリーシュ)と情熱的な恋に落ちた。彼女は彼と別れパリへ戻る際、彼に自宅の住所を教える。5年後の12月14日、金曜日の朝、フェリシーはパリ郊外にあるロイック(エルヴェ・フュリク)の家のベッドで目覚め、パリのベルヴィルにあるマクサンス(ミシェル・ヴォレッティ)の経営する美容院に出勤する。 彼女はマクサンスとも付き合っているが、彼は妻と別れ、店を売り、故郷のヌヴェールで火曜から新たな店を開業するという。母と暮らすフェリシーには5歳の娘がいるが、土曜の夜にヌヴェールの新しい美容院を見に行き、26日に引っ越すことにする。無教養な彼女は本好きのロイックを心から愛せない。
 彼女が本当に愛する調理師のシャルルはアメリカで働いていたが、彼女が自分の住所を間違えたため音信不通になってしまった。
 27日、ヌヴェールの大聖堂を訪れたフェリシーは、心から愛していない男性と結婚すべきではないと思いなおし、パリに戻り、運命の愛に人生を賭けることにする。

 

【感想】

 先ず、ブルターニュの浜辺で出会った主人公フェリシーと、若い男性らしさ溢れるシャルルとの急速な接近と愛の交歓は、エリック・ロメールらしい美しい画面として構成・表現、又その海岸の景色の美しさと言ったら、一服の写真芸術作品と言って良いほどでした。それにしても再会を期するメルクマークの住所を間違うことなどあることか?と思ったところで一瞬考えた。いやこれは有りですね。絶対間違ってはいけないことを、人間はそう思えば思う程、しでかしてしまう。それが人間なのです。入試で最後見直す時間がなくて解答用紙に受験番号、名前を書き忘れてしまうことなど、日本全体では毎年どれ程あることか。救済処置はないのでしょう?え、あるとこともあるって?でもそれは得点が合格線上ぎりぎりだったら切り捨てられるのが必定。

 そうこうしている間に5年も経ってしまい、フェリシーはシャルルの忘れ形見(シャルルは死んだ訳ではないですが)を生み育てるのです。またフェリシーの母親が優しさ一杯の腹のすわった人です。❝どんな時でもあなたの味方よ❞と言って慰めてくれる。だからこそフェリシーは悲観せず、途中複数の男性との付き合いの破綻にもめげず、シャルルとの再会を心の隅で信じ切って生きて来られたのでしょう。この作品ではシェイクスピアの同名の作品が劇中劇として演じられます。死んだ王妃を信じたことにより生き返得ることもあるという教訓を我が身に置き換え涙ながらに観劇するフェリシー。決してキリスト教信者ではないという主人公が、結果宗教の恩寵を受けることに、即ち奇跡を呼び込む力を、たまたま教会に行って神の啓示を受けたが如き表現は、ロメール・ヌベルバークの手法なのかも知れません。

 落とし子エリーズが実の父親に再会できたのが何よりの救いでしょう。シャルルとフェリシーが彼女の家で、再会の奇跡を抱き合って喜び、彼女が涙するのを見たシャルルが泣いているのか?と訊くと❝うれし涙よ❞と答え、それを物陰で見ていたエリーズは悲しくなったのか(多分父親との再会の嬉しさよりも母の愛情がすべて父親に向かうのではという寂しさがあったのではないかな?)自分の部屋のベッドに座り涙を流していると、祖母が来て ❝どうして泣いているの❞と訊くと、エリーズは母親のセリフを真似て❝うれし涙よ❞と言ったところで会場からどっと笑い声(と言ってもナイトショーに近い上映時刻なので観客は10人程度しかいなかったと思います)が起きました。ロメール監督は「Sense of humor」もある人だと思いました。

  ❝信ずる者は救わるる哉な❞