はっきり言って、戸惑うことは多いです。しかし、みうらじゅん氏がこの状況をスッキリと言い表してくれてて、本当に気持ちがラクになりました。みうらさん曰く、「親は子のファン」。
そんな親からのラブコールを受け入れる子どもがいれば、その親子関係は最強ではないのかと。
三浦家の歴史を写真で追う
10月6~13日、「TOBICHI2」(東京都港区)にて開催されているのは、その名も「親バカ子バカ展」。
あのみうらじゅんさんと、娘でありグラフィックデザイナーのくどうひかりさんがコラボして作り上げた“三浦家の展覧会”だそう。この親子が辿った道のりを追うことで、「いっそ“親バカ子バカ”になるのもいいかも?」なんて気分になれる内容になっているらしいです。
この展覧会、私も行ってきました!
さて、会場である「TOBICHI2」の扉を開けると、いきなりこれです。
父子が凛々しく、そして仲睦まじく一緒に写真に収まっている。
では、左方向へと進んでいきましょう。すると、親子が仲よさげに我々を出迎えてくれています。
歩を進めると2階へと昇る階段があるのですが、こんな風に彩られていました。
みうらさんとくどうさんによるこれまでの道のりを切り取った親子写真の数々が展示されているのです。
両者の親バカ子バカっぷりは、写真に存分に表れています。
以下の写真には、父が娘に施した“刷り込み”が顕著。
ゴジラ撮影現場で記念撮影するくどうさん。
両親がニューヨークへボブ・ディランのライブを観に行くので、くどうさんは付き添い。
寺社仏閣を巡る親子。
チャールズ・ブロンソンになるくどうさん。
こちらの写真からは、父から娘への愛情がだだ漏れです。
習字が得意ではなかったというくどうさん。そこで、字が上手いみうらさんが半紙に爪痕を付け、その上をなぞって書くという手法で出来上がった「左右」です。
サングラスをかけると父子うりふたつ。
そして、くどうさんの結婚。離婚しているみうらさんは、くどうさんが結婚式に呼んでくれたことが予想外だったそう。
「呼んだんですよ、俺を。結婚式に。『呼ぶんだ!』と思って、それは応えなきゃと思って。どの面下げて行くんだというのもこっちにはあるんで、伊勢丹で燕尾服借りて」(みうらじゅん)
写真には「家族揃って式ができて嬉しかった!」という、くどうさんのコメントが付けられていました。みうらさんは結婚式から帰宅し、自宅で涙が止まらなくなったそうです。
父に対する複雑な思い「私も見てくれ!」「私の方が知ってる!」
2階の「くどうひかりのコーナー」へ着くと、なんとそこにはくどうさん御本人が在廊していました!
バックにみうらさんの動画VTRが流れるこのスペースでは、くどうさんが仕事の発注や相談を受け付けているとのこと。
せっかくだから、くどうさんにお話を伺いたいと思います!
――みうらさんはくどうさんとの関係性について「親は子のファン」とおっしゃっていましたが、くどうさんにとってみうらさんはどういう存在ですか?
くどう 言うのは恥ずかしいけど、誰よりも一番ファンだと思います(笑)。子バカだと思います。
――2世である自分を受け入れられるようになったのは最近ですか?
くどう 最近です。それまでは周りから「(お父さんの)ファンです」って私に言ってくれる方が多かったんですけど、ジェラシーがあって、反抗じゃないですけど父に率直に言えることができなくて(笑)。最近、結婚して価値観がガラッと変わりまして、「父、好き!」って前面に出して面白いことができたらいいんじゃないかなって(笑)。
――その思いは、前からあったんだけど恥ずかしくて出せなかったということですか?
くどう そうですね、お互い(笑)。色々、(両親の)離婚とかがあって、こっちも会いづらい時期があったんですけど、それも乗り越えてお酒を飲んだりする仲になったので、それからですね。
――先ほど「ジェラシーがあった」と伺いましたが、それは2世である状況への悶々とした思いなのか、「私の方が父のことを知っている!」というものなのか、どちらでしょうか?
くどう 両方ですね。私もものづくりで同じ道を辿っていたんで、まず自分のものを見てもらうより先に父の話が出てきちゃうってことが結構あり「私も見てくれ!」という気持ちが思春期にあって。「みうらさんの○○って本を読んだよ」って感想を言ってくれてうれしいんですけど「私の方が知ってるんだぞ!」という気持ちもありました(笑)。
結婚して、ようやく“子バカ”になれた
――「ほぼ日」で公開されている動画では、みうらさんが「結婚式に俺を呼ぶんだ!」と驚いていらっしゃいました。
くどう (笑)
――様々な感情の紆余曲折を経て、現在の境地に辿り着いた?
くどう そうですね。ずっと隠してたんです。「父はみうらじゅんです」って言うと説明するのが色々面倒臭いですし、離婚した後だったりもしたので母の気持ちもありました。でも、こっちから「好き」という思いを出しちゃってもいいかなぁっていう境地になりました。
――結婚して、くどうさんの中で何が起こったんでしょうか?
くどう うちの夫が父のことをよく知らない、サブカルチャーとかに全く興味のない人だったんですね。価値観が違う夫に出会うことで「父にすごく似てて、同じことをしてたんだ」と気付かされて。「これから新しいことをしていかなきゃいけない!」って独立して、今は「どうせなら何でも見せちゃえ!」って(笑)。
――ご主人から「お父さんと似たことをやってるね」って指摘されたんですか?
くどう 音楽の趣味について話したりすると、やっぱり父が好きなものを私も全部辿ってきてるんです。ディランとかも聴いてたし、70年代のロックが家にいっぱいあって、小さい時から刷り込まれてたんで。そんなのばっかり聴いてたんです(笑)。
――結婚して価値観の変化が起こり、もうみうらさんに対する複雑な思いは乗り越えていらっしゃいますか?
くどう そうですね、楽しんでエンターテイナーになってもいいのかなという気持ちがあります。結婚してからは「父とは違う道を歩んでいるかな?」と思えているので、「みうらさんが好きです」って言ってくれたら素直にうれしく受け止められるようになりました。
――独り立ちしたからそういう境地になったんですね。
くどう そうですね。ようやく親離れできたと思います。もう30歳なんですけど(笑)。
父を盛ってハンサムに描く娘
「くどうひかりのコーナー」では、くどうさんが手渡しで「親バカ子バカうまい棒」をプレゼントしてくれます。
「父を描いたのは初めて」だというくどうさん。心なし、みうらさんがハンサムに描かれているような気がします。
「盛りました(笑)」(くどうひかり)
また、このコーナーではくどうさん制作のオリジナルグッズが販売されています。
こちらは、くどうさんが自ら自宅の窯で焼いた陶器製『おさるの箸置き』(税込540円)。なんと展覧会初日で売り切れてしまったそうで、追加で制作中とのことでした。
『マスキングテープ』(税込432円)は可愛らしい。銭湯を愛する動物たちに混じって、パパパンダになったみうらさんも湯に浸かっていました。ただ、この作品もすでにSOLD OUTとのこと……。
また、数々の作品の中にはみうらさんをモデルにした「パパパンダ」の陶器も展示されています。でも、この陶器だけは非売品です。
「しれっと入れてます(笑)」(くどうひかり)
こちらは、同展覧会を記念して制作された『親バカ子バカTシャツ』(税込2,970円)。左がくどうさんで右がみうらさんです。この絵はみうらさんによるものですが、こちらも現在SOLD OUTだそう。
そして、くどうさんの席の横には顔出し看板が設置されています。
くどうさん側の看板に、実際にくどうさんに顔をハメていただきました!
三浦家は、顔出し看板を発見すると、とりあえず出しておかないと気が済まない血筋だそう。
会場で得たパワーをしたためる「親バカ子バカ絵馬」
こちらは「親バカ子バカ絵馬」のコーナー。会場で得た“親バカ子バカパワー”を親子の思い出や願いごととして絵馬にしたためます。
絵馬を描いた人は、この「親バカ子バカおみくじ」を無料で引くことができます。
おみくじが出てくると、その中にはくどうさんによるこんなイラストが。
娘と交わした手紙を全てファイリングしていた父・みうら
娘がコレクションしていたものを、「あ、こんなの集めてんだ、わかったわかった」と父が出張先で買ってはどんどん集め、いつしか娘のブームを乗っ取ってしまう。そんな流れで、全国からみうらさんがくどうさんのために集めたおまもりを展示する「父と子のお守りMAP」も用意されています。
スゲー数! しかも、本当に全国で買ってる!!
みうらさんは仕事で外に出ることが多く、顔を合わす機会が少なかったので、父子で交換ノートをやっていたそうです。
くどうさんが父のために綴った手紙は、みうらさんが全てファイリングしていたとのこと。
「『よく取っておいたな、さすが俺だな』って、父は言ってました(笑)」(くどうひかり)
ちなみに、くどうさんが制作した作品は続々と売り切れており、後から緊急で他の作品が補充されていっている模様。
娘が手がけたものづくりの結晶を見守る、父(の動画)。親子の絆もろ出しなスペースで、子バカを自認するくどうさんの作品の数々を満喫することができます。
(寺西ジャジューカ)