東京都三鷹市で12月8日、女子高校生の運転する自転車が散歩中の男性(85)に衝突し、死亡させる事故が起きた。
フジテレビの記事によると、男性は歩道を散歩中で、女子高校生は男性が歩いているのに気づかずに衝突。「寒かったから下を向いたらぶつかった」と話しているという。
自転車事故をめぐっては過去に、女性をはねてけがをさせた小学5年生の保護者に裁判所が約9500万円の賠償を命じる判決が出たこともあった。
今回のような歩道での自転車死亡事故の場合、どのような法的責任を問われるのか。また、損害賠償額はどのように決まるのか。
交通事故の問題に詳しい野口辰太郎弁護士に聞いた。
●刑事責任として罰金や禁固刑の可能性も
今回のように自転車で死亡事故を起こした場合には、刑事上の責任と民事上の責任の両方が問われる可能性があります。
まず、刑事上の責任ですが、多くのケースでは「過失致死罪」が適用され、懲役刑は無く10~50万円程度の罰金刑が課されます。
ただし、加害者が配達員など業務として運転していた場合には「業務上過失致死罪」が、高速度や赤信号無視など加害者に著しい過失があった場合には「重過失致死罪」が適用され、50~100万円程度の罰金又は執行猶予付きの禁錮刑(1~2年程度)となる可能性もあります。
もっとも、被害者との間で示談が成立していたり、加害者が十分に反省している場合には不起訴となるケースもあります。
今回の事故状況や原因はまだ明らかになっていませんが、加害者が「寒かったから下を向いたらぶつかった」と話していることから考察すると、業務として運転していた事情や著しい過失の存在をうかがわせる事情はないため、過失致死罪に該当すると考えられます。
そのため、不起訴とならなかった場合は、10~50万円程度の罰金刑となることが予想されます。
●民事責任では数千万円の損害賠償の恐れも
民事上の責任ですが、一般的に、損害賠償の金額は、事故態様に加え、被害者の怪我の程度(死亡も含む)や年齢、収入、家族構成など様々な事情を考慮して決まります。
事故の原因について、被害者側にも落ち度がある場合は、過失相殺により責任が軽減されますが、今回のように歩道における歩行者を被害者とする事故の場合、原則として被害者に落ち度はなかったとされ、過失相殺による責任の軽減がほとんどされません。
今回の事故について、事故態様や年齢以外の被害者情報など具体的な事実関係は不明ですが、加害者は、被害者の遺族の方に対し、数千万円程度の損害賠償義務を負うおそれがあります。
●加害者が保険未加入→被害者は十分な賠償を得られない可能性も
加害者が12、13歳に満たない場合には、責任能力が否定され損害賠償責任を負わないとされます。その代わり、加害者の両親は、監督責任を問われ損害賠償責任を負う可能性があります。
今回の事故では、加害者の年齢は15~18歳くらいと予想されることから、損害賠償責任を負うのは、両親ではなく加害者本人となりそうです。
そうすると、被害者の遺族は、法律上、加害者に対してのみしか請求ができません。加害者が個人賠償責任保険などに加入していれば、遺族は保険会社を通じて適切な賠償を受けることができますが、保険に加入していない場合は十分な賠償を受けられないおそれが高いです。