「コンビニは、カスハラ(カスタマーハラスメント)が多いですよ」。こう話すのは、派遣スタッフとして100軒以上のコンビニを渡り歩いてきた男性Aさん。客から怒鳴られることは珍しくないという。
「たばこの注文で、『(銘柄ではなく)番号でお願いできますか』と言っただけでキレられたり、声が小さくて、『もう一度お願いします』と聞き返したら、店の外にいても聞こえるような大声を出されたり」
そんなAさんは、助っ人として働くことになった店舗で「外国人の名札」を渡されたことがあるという。外国人のふりをして働いてみて、感じたことを語ってくれた。
●「本部に言うぞ」カスハラ客の脅し
大手のコンビニでは、スタッフが名札をつけるのが通常だ。コンビニはその立地からリピート客も多い。名前を覚えてもらい人間関係を築ければ、常連客としての定着だけでなく、トラブル防止も期待できる。
ただ世の中、そう簡単にはいかない。ひとたび揉め事になれば、客から本部に苦情がいき、自分の名前を告げられることにもなるからだ。
「大声で怒鳴り、恫喝してきた客がいたので、『警察を呼びますよ』と言ったら、本部にクレームがいった。相手の都合の良いように脚色されていました。自分は単発の派遣だし、普段の名札は『スタッフ』とかなので良いのですが、その店で本名の名札をつけて働いている人にはきついですよね」
●外国人の名札をつけたら、「過剰な要求」が消えた
さて、そのAさん、ある勤務先で、以前勤務していたとみられる外国人の名前が入った名札を渡されたことがある。片言で話し、「外国人留学生のふり」をして接客したところ、客からの「過剰な要求」が消えたという。
「たとえば、箸やスプーンを何本つけるかとか、1秒でもレジを待たされると怒り出すとか――。普段は『黙っていても分かれよ』というようなスタンスで接してくるお客さんが少なくありません。 でも、こっちが『外国人』だと何も言ってこなくて、大体はマニュアル通りの対応で済みました。お客さんも過剰に『日本人』に期待しすぎているのかもしれないですね」
ただし、少数ではあるが、外国人の名札をつけることで、差別的な言動をとられたり、「日本人(店員を)出せ」と言われたりしたこともあったという。
カスハラの発生には、加害者の特性だけでなく、加害者と被害者の関係性も影響しているとされる。店員の名札から国籍などの属性を読み取り、客が態度を変えていることが分かる事例だ。