死を招く謎の寄生虫「芽殖孤虫」正体明らかに
寄生虫が侵入して体内を食い破り、患者はほぼ確実に死に至る。これまでの報告例は世界でわずか18。こんな奇病をもたらす「芽殖孤虫(がしょくこちゅう)」は、正体が長らく謎に包まれていたが、宮崎大学や国立科学博物館(科博)などのチームが遺伝子を解析し、新種の寄生虫だと突き止めた。
宮崎大の菊地泰生准教授(寄生虫学)によると、芽殖孤虫は1904年、東京で初めて感染した患者が確認された。感染すると糸状の幼虫が皮膚や臓器で増殖する。有効な薬はなく、一つずつ取るしかない。幼虫から植物の芽が出るように増殖することから「芽殖」、どの動物からも成虫が見つからないことから、孤児の虫という意味で「孤虫」と名付けられた。
詳しい研究が進まなかった背景について、菊地さんは「症例が少ない上、保管された標本はホルマリン漬けのためDNAが傷んでいた」と話す。正体は既に知られている似た寄生虫の異常個体とする説と、新種の寄生虫とする説に分かれた。
研究が進んだきっかけは、菊地さんが科博の研究者とたまたま芽殖孤虫の話をしたことだ。実は科博では、81年に南米・ベネズエラの患者から採取された芽殖孤虫を生きたまま、マウスの体内で代々飼い続けていることがわかった。
生きた芽殖孤虫からDNAを取り出して解析したところ、1万8919個の遺伝子があることがわかった。似た寄生虫の遺伝子数とは異なり、異常個体説は否定され、新種の寄生虫だと判明した。
遺伝子の性質を調べて突き止…
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