伊勢の商店街モデルに小説 地元在住の作家「聖地巡礼で街訪れて」
三重県伊勢市内に実在する商店街をモデルにした小説を、伊勢市在住の作家秋杜(あきと)フユさん(39)が発表した。商店街の温かい人間模様を描いた小説「ようこそ伊勢やなぎみち商店街へ」(集英社オレンジ文庫)で、全国で発売中だ。
伊勢市で生まれ、高校卒業まで暮らした秋杜さんは、子どもの頃から商店街でよく遊んでいた。「自然に互いを助け合う雰囲気が好きだった」。作品のモデルになったのは、市中心部にある「しんみち商店街」と「高柳(たかやなぎ)商店街」。ふたつの名前を合わせて作品にした。
小説では、東京の暮らしで心を病んだ主人公が地元の商店街に戻り、人々の優しさに触れて少しずつ自らの過去と折り合いをつけていく。実際の店は出てこないが、作中のおすし店や生花店、文房具店などはつい、モデルを探したくなる。
秋杜さんは幼少期から空想するのが好きで、結婚後の2009年ごろ、空想をもとに小説を書き始めた。夫の勧めもあって毎月1作を小説賞へ応募し続けた。12年に伊勢市に戻った翌年、集英社のノベル大賞を受賞。これまでに集英社コバルト文庫を中心にファンタジー作品などを15冊以上発表した。3人の子育てをしながら執筆を続ける。
今回、地元の商店街を舞台にした小説を書いたのは「最近、悪いイメージで語られる田舎の濃密な人間関係を、悪いことばかりじゃないと知ってもらいたかったから」という。
若者たちの間では、アニメや漫画の舞台になった土地を「聖地」と呼んで訪ねる「巡礼」が盛んだ。秋杜さんは「作品を読んだ人が『聖地巡礼』で、しんみち商店街を訪れるようになってほしい」と期待する。
続編の構想もあり、「将来ドラマ化されて、商店街でロケがあれば、もっと人が集まる。ドラマでは俳優は誰がいいか想像するのも楽しい」と空想は膨らむ。作品は約300ページ、価格792円(税込み)。
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