第12回才能は生まれか育ちか 遺伝、環境、努力、双子1万組を調査した答え
将棋界の全タイトルを21歳で独占した藤井聡太八冠、二刀流で大リーグのMVPと本塁打王に輝いた大谷翔平選手。2023年は前人未到の境地を切りひらいていく「天才」の活躍に沸いた。そのすごさを説明する時、頭脳や肉体が幼少の頃から優れていたとの話があれば、プロデビュー後のたゆまぬ鍛錬の話もある。
才能は生まれ持ったものか、育つ環境の中で身につけるものかは古来の関心事だ。生まれの要素は「カエルの子はカエル」と言う一方で「トンビがタカを生む」とも言い、環境の要素は「朱に交われば赤くなる」と言う一方で「掃きだめに鶴」「泥中のハス」とも言う。
もちろんどちらも大事な要素なのだが、近年のヒトゲノム解析や脳科学の進歩で、謎だった才能の源が解き明かされつつある。1万組超の双子を調査し、遺伝と環境の関係について調べている行動遺伝学者の安藤寿康(じゅこう)・慶応大名誉教授に聞いた。
――双子の研究から何が分かるのでしょうか?
「双子には一卵性双生児と二卵性双生児がいます。学力、体力、性格、生活習慣……、様々な項目で一卵性の2人の類似性と二卵性の2人の類似性を調べ、両者を比較することで遺伝の影響が大きいのか、環境の影響が大きいのかが推察できます」
「遺伝子の一致度は一卵性の2人が100%なのに対し、二卵性の2人は異なります。一方で環境は、一卵性の2人も二卵性の2人も同じ家庭で育ち、中学校ぐらいまでは同じ学校に通うことが多いので、ほぼ同じです。個別の事例は様々ですが、大規模調査で一卵性と二卵性がどの程度違うかを数値化することで、様々な分野で遺伝の影響がどの程度なのかが分かってきました」
「例えば、身長や体重は一卵性の一致度はかなり高いのですが、二卵性は2人の数字のバラツキが大きいです。同じ家庭で育つということは食事もほぼ同じものを食べているのにこの違いが出るのですから、身長・体重は環境よりも遺伝によって決まる要素が大きいと言えます。逆に飲酒や喫煙の習慣の有無は、一卵性と二卵性の差がそこまでありません。これは、遺伝よりも酒やたばこが身近にあるかどうかという環境の要素が大きいと言えます」
――子育て中の身としては、やはり気になるのは学力です。
遺伝レベルでの自分の向き不向きにはどうすれば気づけるのか、配偶者に高学歴などの条件を求めるのは正しいのか、様々な疑問を安藤名誉教授に尋ねてみました。
「そうですよね(笑)。IQ…