パレスチナは世界秩序を揺るがす 中東研究者が即時停戦を訴える理由

有料記事イスラエル・パレスチナ 対立の深層

聞き手・根本晃
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 ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けてから約1カ月が過ぎました。衝突の行方が見通せないなか、千葉大学酒井啓子教授(現代中東政治)は、「この問題は世界秩序の根幹にかかわるものだ」と警鐘を鳴らし、即時停戦を訴えています。どういうことでしょうか。

 パレスチナ人は1948年のイスラエルの建国以降、自らの土地を追われ、占領されるという二重の屈辱を70年以上にわたって受けてきた。【〈1〉】民間人に多大な犠牲を出したイスラム組織ハマスの攻撃は到底許されないが、背景には極限まで高まった人々の不満があった。

 イスラエルは国際法違反と指摘されながらも、パレスチナの占領地への入植を続けてきた。2005年にガザ地区から撤退したが、ハマスが06年の議会選で勝利し、後にガザを実効支配したことを受け、人やモノの出入りを厳しく制限し、電力や燃料の供給も管理下に置いた。【〈2〉】ガザの失業率は高止まりし、人々は「天井のない監獄」で、行き場のない気持ちを募らせていた。

 中東全体をみると、00年代以降、アフガン戦争やイラク戦争シリア内戦、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いなどが相次いだ。米国が対テロ戦争による巨大な経済的・人的犠牲を受けて中東でのプレゼンスを維持することが不可能になるなかで、特に湾岸諸国は地域大国化したイランとの対立に備えざるを得なくなった。

アラブの民衆はパレスチナを忘れていなかった

 そうして各国政府のパレスチ…

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この記事を書いた人
根本晃
イスタンブール支局長|中東・欧州担当
専門・関心分野
国際政治、トルコ、ガザ、ウクライナ、語学
イスラエル・パレスチナ問題

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