Re:Ron連載「問いでつながる」第3回
再会というものは多くの場合うれしいものだが、あまりに巡り合うとなると、戸惑いをおぼえることもある。相手はひとではない。言葉である。あるいは一定の思想といってもいい。とりわけ学生の口からこぼれることが多く、それははっきりと発音される。
「他人に迷惑をかけなければ、いいと思う」
この言葉には先週も会ったし、先月も会った。あっちでも会ったし、ここでもまた会うことになった。自由とは何かというような大きく抽象的なテーマについて話しているときも、表現のあり方について話しているときも、具体的な時事問題について話しているときも、「迷惑をかけなければ」というフレーズがたびたび顔を出す。
戸惑いをおぼえる理由はふたつある。ひとつは、地域を問わず、特に中学や高校で巡り合うこと。もうひとつは、それがまるでこの世の真理のごとく提起されること。これが結論であり、疑いようのない正解なのだと持ち出されることだ。
そのたびごとにわたしは、またお前かと座りなおす。集中しなければならない。こいつはなかなかてごわいのをわたしは知っている。小さく無害なように見えて、するりと身体に入り込み、内側から食い破る力を持っている。気をつけなければならない。
迷惑をかけなければよい、という判断は、迷惑をかけることは悪い、という前提を持っている。たしかに「迷惑」という言葉は、「申し訳ありません」という謝罪の言葉とセットである。だが一方で、わたしたちは毎日のように「ご迷惑をおかけして」という響きを聞き取っている。耳元にずっと、乗っかっている。
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