第14回望まぬ妊娠「男性不在」の日本 女性や子ども政策、フランスの視点は
7月、名古屋地裁で実家の庭に生後間もない乳児の遺体を埋めたとして死体遺棄罪に問われた女性の判決がありました。女性は風俗店に勤務。判決は「風俗店で十分な避妊もせず客と性交し、妊娠に気づかず、出産後周囲に相談することもないまま遺体を遺棄した経緯に鑑みると、短絡的な行動と指摘せざるをえず、経緯や動機にくむべきものがあるとはいえない」として執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。女性にくむべき事情はなかったのでしょうか。
日本では今も孤立出産し、死産した子を遺棄したとして女性が罪に問われる事件が絶えません。
パリを拠点に、子ども家庭福祉を研究する安發(あわ)明子さん(42)は、問題の根底には「売春せざるをえない、誰にも助けを求められない人が追い詰められてしまう制度の欠陥とそうした人々への無理解。妊娠させた男性や買春した男性の責任は問わず、女性の自己責任に帰する人々の意識の不均衡が問題だ」と指摘します。日本とは視点が異なるフランスの女性や子どもをめぐる政策について聞きました。
売春せざるをえない人は「被害者」という視点
――判決をどう思いましたか。
裁判官のなかには「どうせ売春婦の問題なんだろう」という意識があると思いました。フランスでは売春せざるをえない状況にある人は被害者とみなし、守られなければならない存在です。特に未成年は保護の対象となり児童相談所が対応します。各県には未成年売春被害のケアを専門とする機関があり、被害者を見つけるためにネット上や夜の町を巡回したり、話しかけやトラウマのケアをしたりします。売春の状況にある未成年はすべてトラウマを抱えていることが分かっています。
フランスの社会福祉の土台に…
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