「褒めたつもりで炎上、致命的」 岸田首相「女性ならでは」に失望

有料記事

二階堂友紀 長野佑介
[PR]

 「女性ならではの感性や共感」に期待――。女性閣僚を過去最多タイとなる5人登用した岸田文雄首相が、13日の記者会見でそんな発言をした。「男性ならではの感性って言う?」「昭和か」「ダサすぎて泣けてくる」。SNSでは疑問や失望の声が広がった。識者はジェンダー平等に対する意識の欠如を指摘する。

 首相は今回の内閣改造で女性を登用し、刷新感をアピールした。狙いを問われた首相は会見で「経済、社会、外交・安全保障、この三つの柱を中心に政策を進めていくために、ご活躍いただける方を選んだ」としたうえで、「女性ならではの感性や共感力も十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」と述べた。

「ジェンダーバイアス内面化おじさん」

 この日の夜、TBSの報道番組「ニュース23」で、メインキャスターを務める小川彩佳アナウンサーは「国のトップの認識としては、なかなかの失言だったんじゃないかなという気もする」と批判した。

 「典型的なジェンダーバイアス内面化おじさんの発想」「感性よりも論理的思考力に、共感力より決断力や指導力に優れた女性もいるはず」。社会学者の水無田気流(みなしたきりう)さんはX(旧ツイッター)にそう投稿した。

 水無田さんは朝日新聞の取材に「男性には『男性ならでは』と言わないのに、女性だと属性が先立つ。彼女のここが素晴らしいと言わずに属性で語るのは、実力を評価したのではなく、女性としてゲタを履かせたと言っているに等しい」と指摘し、「褒めたつもりで炎上しているのが致命的。なぜ批判されているのか、理解できないのではないか。この政権でジェンダー平等は進まないと、絶望的な気持ちになった」と言う。

「女性閣僚に大変失礼だ」

 ジェンダー問題に詳しい三浦…

この記事は有料記事です。残り948文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 LGBTQ 政治と社会
  • commentatorHeader
    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2023年9月15日12時0分 投稿
    【視点】

    日本のジェンダーギャップが著しいことは、様々な国際比較データを見ても明らかである。それは根深い歴史的・社会経済的な要因から生まれているが、長年にわたり権力の座にある自民党の考えの古さや偏りも重要な原因であることは否定できない。 選択的夫婦

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    米重克洋
    (JX通信社 代表取締役)
    2023年9月15日13時9分 投稿
    【視点】

    岸田首相のモノを伝える力には随分大きな課題があると思う。今回の記者会見では首相がフォントやレイアウトも含めよく工夫されたスライドを使い、閣僚一人ひとりの登用理由に割と丁寧に言及するなど、相当念入りに準備された形跡がある。それにも関わらず「女

    …続きを読む
Think Gender

Think Gender

男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]