第2回「うつさなくて良かった」そう言った患者の最期、心の中のラブレター

有料記事

編集委員・中島隆
[PR]

 大阪府枚方市は、七夕伝説の地である。

 天野川という名の川が流れ、川砂が星のように白く光って見えたのだろう。だから、いにしえの歌人たちは、この地で七夕の和歌を詠んだ。

 この地に、「天の川病院」という名の総合病院がある。病床は157床。スタッフはおよそ400人。

 そんな病院で2月、「ラブレター研究家」を名乗る橋本昌人さん(58)の手紙を朗読するイベントがあった。

 感謝の気持ちや本気の思いがこもっていたら、誰にあてた手紙でも「ラブレター」。そう考える橋本さんの朗読を聴いて涙を流し、心をすっきりさせる。そんな「涙活(るいかつ)」と呼ばれる活動をしている。

祈る思いで待っていた

 看護師や事務スタッフら50人ほどを前に、この日橋本さんが朗読したのは、この病院で透析医療に40年かかわる看護師が描いた、ある親子への感謝だった。

 親子は、母と40代の息子。ふたりとも、透析で長期入院していた。

 《昨年6月末、コロナワクチンが高齢者に接種され始めたころ、透析を受けて二日後、ふたりともコロナでほかの病院に入院したと知り、とてもショックでした。

 いつも2人から、「体に気をつけて仕事を続けてな。しんどかったら休みもらいな」と気遣ってくれる優しい言葉に励まされてきたので、本当に祈る気持ちで2人の情報を待っていました。

 2カ月後、お母さんが先に帰院され、症状は思ったより軽かったとのこと。

 息子さんは呼吸器をつけて帰…

この記事は有料記事です。残り2004文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    増田ユリヤ
    (ジャーナリスト)
    2023年7月29日18時0分 投稿
    【解説】

    子どものころ、父に叱られることがあると、翌朝必ず、広告の裏に鉛筆で書いた父からの手紙がテーブルの上に置いてあった。叱った理由が書いてあることもあれば、理不尽な𠮟り方をしたことを詫びる内容のときもあった。それを読むと、どんな内容であれ、涙が

    …続きを読む

連載想いをつづって(全30回)

この連載の一覧を見る