解散は「すごい武器」自由に使っていいはずない 九州大・南野森教授
岸田文雄首相は今国会中の衆院解散・総選挙を見送りました。首相は内閣不信任案を提出しようとする野党に対して、解散をちらつかせることによって牽制(けんせい)し、自民党内のコントロールにも用いました。解散権は首相の「伝家の宝刀」とも呼ばれていますが、それを認めているのは憲法か、国会か、それとも国民か。九州大の南野森教授(憲法学)に聞きました。
憲法的には意味不明の言説
――首相は国会終盤に解散をちらつかせました。一連の動きをどうみますか。
解散権は、国民から任期4年で選ばれた衆院議員を一斉にクビにするという強大な権力だ。憲法では、どういう条件で誰が行使できるのか明確な定めがない。
それをいいことに、いつの間にか首相が好きな時に好きな理由で行使していいと受け止められている。政治報道も、国民もその前提に立っているのは危険だ。そんな強大な権力を、憲法が首相に与えているとは到底思えない。「立憲民主党が内閣不信任案を出したら解散する」というのも憲法的には意味不明の言説だ。
――首相の「伝家の宝刀」だといわれます。
そもそも解散権は首相ではなく内閣の権限だ。首相あるいは与党が、自分たちに都合のいいタイミングで総選挙ができると考えるのは、とても不公平だ。その時期を操作することで、国民の審判を受けるべき政策の結果が見えにくくなってしまう。本来は任期4年を全うし、その成果をもとに国民の信を問うべきだ。
議員の任期は大切だ。諸外国の独裁者は勝手に任期を延長することもある。それを防ぐには、有利であれ不利であれ3年ごとに半数を改選する参院選のように、規則正しく選挙することが重要だ。
―解散権を抑制的に行使するための仕組みはないのでしょうか。
「大義」なければ単なる権力の乱用
内閣不信任案可決の場合にしか解散ができないとは憲法学でも考えていない。内閣法制局も同様だ。しかし、首相が好きな時に好きな理由で解散していいとはならない。理由が必要だ。「大義なき解散」は単なる権力の乱用でしかない。
解散権抑制のために一番簡単なのは憲法を改正すること。「こういう状況、条件ではないと行使できない」と条文に書く。ただ、現実的ではない。
学説などでいわれているのは…