人の伴侶になったイヌは「喜びの涙を流す」 イヌ寛容化、驚きの研究
イヌは人とともに生活するようになった最古の動物と言われる。オオカミから分かれたとされるイヌはどのようにして人の伴侶動物となったのか。麻布大の菊水健史教授(53)たちは、お互いの存在を「まあいいか」と受けとめる寛容性をキーワードに解明を進めてきた。いま、新しいイヌと人との共存の姿を探る。
「イヌも喜びの涙を流す」
昨年8月、そんな内容の研究結果を発表した。飼い主から数時間、離したイヌが飼い主と再会すると、イヌの涙の量が増えるという。一方、いくら親しくても飼い主ではない人では、再会したときに、涙は増えなかった。
学生のひと言で研究開始
研究のきっかけは、学生の何げないひと言だった。菊水さんが飼っているスタンダードプードル「ジャスミン」について、「目がウルウルして、以前より可愛くなった気がします」と話した。このころジャスミンは出産したばかり。子犬への思いで、感情が高まっているからのように思えた。
動物が情動によって涙を流すことは知られていなかったが、「じゃあ、調べてみよう」。飼い主らの協力を得て、60匹近くのイヌに研究に参加してもらった。
異なる再会のケースを設定し、イヌのまぶたに小さな紙を挟み込み、1分間じっとしてもらう。少し訓練すると、イヌたちも涙の採取に協力してくれた。人工涙液で「ウルウル目」のイヌの顔をみた人間は、「かまいたい」というポジティブな印象をより強くもつことも確認された。
研究グループが加わる麻布大の「動物共生科学ジェネラリスト育成プログラム」は、文部科学省の2020年度からの「出る杭を引き出す教育プログラム」に選ばれた。一般的に「出る杭は打たれる」と言われる中、非凡な才能をもつ学生の能力をむしろ積極的に伸ばそうというねらいの事業だ。
高校生から参加、1年短縮で修士も
取り組みの一つは、高校生のうちから研究に関われるようにすること。参加した神奈川県内の高校2年生は、飼い主や他人と接したときのイヌの顔を動画撮影し、表情を数値化して解析した。飼い主と接したときは口の開きがより大きくなることを統計学的に明らかにして、「飼い主といるとき、イヌは笑顔になるようだ」と校内でポスター発表した。
大学院の早期修了も取り組みの一つ。学部生のときから大学院の授業を履修でき、通常より1年早い5年で修士課程までを修了できる。
修士1年目の石尾香奈さん(…
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- 【視点】
言葉にならないたまらない感情的な何かを表現するのが涙だとしたら、言葉だけではすれ違い続けるSNS社会でこそ、ふんだんに泣ける大人でありたいと思う。
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