高まるグローバルサウスの存在感 ASEANがロシアを排除せぬ理由
主要7カ国(G7)広島サミット議長を務める岸田文雄首相が電撃的にウクライナを訪問し、ほぼときを同じくして中国の習近平(シーチンピン)国家主席がロシアを訪れ、プーチン大統領と会談した。日本や欧米など民主主義陣営と中ロの対立構図が目立つ中、南半球の途上国・新興国を中心とした国々「グローバルサウス」が、第3極としての存在感を高めている。どんな背景があるのか。グローバルサウスの一翼を占める東南アジアの政治、経済に詳しい神奈川大学の大庭三枝教授に聞いた。
おおば・みえ
1968年生まれ。神奈川大教授。著書に「アジア太平洋地域形成への道程」「重層的地域としてのアジア」など。
――「グローバルサウス」の一角を占める東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ウクライナ侵攻への対応で欧米と温度差があるように見えます。
「ASEANは多様な10カ国の集まりですが、彼らの対外戦略には共通の特徴があります。特定の大国だけと近くなったり、特定の大国、域外国だけを排除したりしない、というバランス重視路線です」
「特定の大国に接近しすぎれば、その巨大な影響力にのみ込まれたり、依存しすぎて身動きがとれなくなったり、大国同士の衝突に巻き込まれたりするリスクが出てきます。そうしたリスクを避けるため、ASEAN諸国は主要な域外国との関係をそれぞれ強化してきました」
「これは、ASEAN諸国個別の外交にも見られますし、ASEANとしての域外国との連携強化にも見られる特徴です。ロシアも、彼らが関係を維持すべき域外国の一つです。また、米国をはじめとする先進国のみに立場を近づけすぎるのを避けたいという意図もあるでしょう」
アフガン撤退で米国への不信感
――いまの地域バランスだと、米中のどちらにも傾きすぎない、ということですか。
「地域の安全保障上、ASE…
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