ニセコへ流れる海外富裕層マネー 「日本の中の外国」と弱い円の功罪
日本にあって、日本ではない――。国際的なスキーリゾートとして知られる北海道南西部のニセコ地区。海外資本が開発を進め、訪れる客も働くスタッフも外国人が目立つ。今またコロナ禍で消えたインバウンド(訪日観光客)が戻り、高級コンドミニアムは売れ始めている。人手不足にも直面するその姿は「弱い円」の光と影を映し出す。
「すごい雪だ」。昨年12月中旬、米ニューヨークから訪れた男性(41)は、初めてみるニセコの雪を絶賛した。「JAPOW(ジャパウ)」。現地の粉雪はジャパン・パウダースノーを略してそう呼ばれる。
スキー愛好家の男性は米大手金融情報サービス会社に勤め、一緒に来た妻(34)も財閥系の大手投資銀行にいる。
「接客もいい。価格もリーズナブル」。米国のパワーカップルが口をそろえて評価するのは、宿泊先の高級コンドミニアム「イントゥイション・ニセコ」だ。
主峰ニセコアンヌプリの頂を望み、スキー場に近い倶知安町のひらふ坂。ニセコ地区の中心地に近いこのコンドミニアムは昨年12月上旬にオープンした。6階建てで総部屋数は43室。1泊5万7千円の部屋から、同120万円する5階と6階にまたがるペントハウスもある。高額の宿泊料金にもかかわらず、海外客のほとんどは5泊以上する。
ひらふ坂一帯に点在する高級コンドミニアムの存在は、海外マネーを吸い寄せるニセコの力の源泉だ。分譲マンションと同じで各部屋にオーナーがいる。
自分が使わない間は部屋を貸し出し、宿泊料から利益を得る。投資マンションと同じビジネスモデルだが、ニセコの場合は、部屋を売却してキャピタルゲイン(値上がり益)を狙う投資家が大半を占めているという。
流れ込むアジアマネー
イントゥイションを管理・運営している地元の不動産会社「ニセコ・アルパイン・ディベロップメンツ」(NISADE)は2005年、オーストラリア資本により設立された。同社の橋詰泰治社長は「設立当時は、不動産投資はオーストラリアが中心。今は香港やシンガポールなどアジアの富裕層が多い」と話す。
雪の質だけでなく、降り積もる豊富な量に目をつけたのは約20年前、現地を訪れたオーストラリア人だった。
コンドミニアムをつくり、そ…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
この冬、「SDGs未来都市」のニセコ町に行きました。ニセコ町にも外国人が多く、その日本離れした雰囲気には驚きましたが、その隣にある倶知安町に行き、愕然としました。日本の中の外国というと響きは良いですが、スキーリゾートや海外からの投資対象とな
…続きを読む