自民・麻生氏「原発で死亡事故ゼロ」発言、官房長官は「起きている」

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 自民党麻生太郎副総裁は15日、福岡県飯塚市であった自身の後援会の会合で、エネルギー問題をめぐり原発のメリットに触れるなかで、「原発は危ないと言うけれど、原子力発電所で死亡事故が起きた例がどれくらいあるのか調べてみたが、ゼロだ」と述べた。一方、松野博一官房長官は17日の記者会見で、原発で死亡事故が起きていると説明し、「痛ましい事故が発生しないよう事業者を指導していきたい」とした。

 原発では2004年に関西電力美浜原発福井県)3号機で配管が破損して作業員5人が死亡する蒸気噴出事故が発生。原子力関連施設では1999年、茨城県東海村核燃料加工会社「JCO」東海事業所の臨界事故で、作業中の2人が死亡している。

 麻生氏は講演で「今最も安く、安全な供給源としては原子力」「原子力と原子爆弾の区別がついていない人もいる」などと主張。将来的に電気自動車(EV)が広く普及した場合などは「電気料金は、原発が使えないなら決定的に上がる」と強調した。

 松野氏は17日の会見で、「死亡事故ゼロ」とした麻生氏の発言への見解を問われ「原発において直接、放射線障害で亡くなった事例はないと認識している」としつつ、「JCO臨界事故で2人が亡くなり、原発敷地内では労働災害などによる死亡事故は発生している」と語った。

 原発事故による死者をめぐっては、高市早苗政調会長(現・経済安保相)が2013年に神戸市内であった党の会合で「事故を起こした東京電力福島第一原発を含めて、事故によって死亡者が出ている状況ではない」と述べ、原発再稼働をめざす考えを示した。ただ、福島第一原発事故では多くの避難者や避難に伴う関連死が出た。地元から批判が噴出し、高市氏は後に発言を撤回し謝罪した。

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2023年1月18日9時12分 投稿
    【視点】

    他にも麻生氏は「防衛増税は国民の理解を得た」「少子化の最大の原因は出産する女性の高齢化や体力低下」といった最近の発言で物議を醸している。 防衛増税についていえば、麻生氏がこの発言をした日のTBS系列の世論調査の数字で、賛成22%に対し

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    前田直人
    (朝日新聞デジタル事業担当補佐)
    2023年1月17日22時20分 投稿
    【視点】

    新聞社は、別に揚げ足取りで失言報道をしているのではありません。このような事実に基づかない発言を立場のある有力政治家がしたときに、「いつものことだから」と受け流していたら事実そのものが捻じ曲げられたまま、定着してしまいます。それは絶対に避けな

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