カニエ・ウェストが映す米国社会 右傾化した「セレブ」が示す矛盾

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聞き手・牛尾梓
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 米国の人気ラッパー、カニエ・ウェスト氏(現在は「イェ」に改名)。グラミー賞を何度も受賞し、ファッションアイコンとしても注目を集めてきましたが、近年は別の方面で話題を呼んでいます。2016年の米大統領選後、ライブ中に突然、トランプ氏への支持を表明。熱狂的支持者として、トランプ氏のスローガンである「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の頭文字「MAGA」をあしらったキャップをかぶって登場したかと思えば、最近は反ユダヤ主義の差別的な発言を繰り返して批判を浴びています。

 キリスト教とポップカルチャーの関わりについて研究する関西学院大神学部の柳澤田実・准教授は、カニエ・ウェスト氏を「米国社会を映し出す存在」だと言います。どういうことなのでしょうか。

近年、ラッパーとしてよりも「お騒がせセレブ」のイメージが強いカニエ・ウェスト。記事の後半では、カニエの「変節」が示す米国社会が抱える問題について語ってもらいました。

 ――カニエ・ウェスト氏はどんな人物なのでしょうか?

 00年代初頭から、ラッパーや音楽プロデューサー、作詞家などのほか、ファッションデザイナーとしても活動しています。

 ヒップホップの中でも非常にエモーショナルで、内省的な内容もラップにしていく、そういう流れをつくった第一人者の一人です。芸術的な側面が強く、ファッション業界でも高い評価を受けています。

 一方で、いわゆるビリオネア(最富裕層)で巨額の資産を持っており、彼の音楽を聴かない人でも「お騒がせセレブ」として、彼の動向をニュースで知っている人も多いかと思います。

 ――政治的な発言が増えたのはいつごろからでしょうか?

 政治に関連する発言や振る舞いが注目されるようになったのは、18年からだと思います。「MAGA」キャップをかぶった写真をインスタグラムに投稿して炎上したり、実際にトランプ氏にホワイトハウスに招待されたり。

 米国社会で右派と左派による二極化が深まっていくなか、白人至上主義者のような発言をしたり、最近では反ユダヤ主義的な発言をSNSなどで繰り返したりするようにもなりました。

もともとは「リベラル」

 ――そうした変化が起きたのはなぜでしょうか?

 カニエはあるインタビューで…

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この記事を書いた人
牛尾梓
欧州総局|欧州連合(EU)担当
専門・関心分野
国際政治、データジャーナリズム、AI、OSINT