異色の背表紙で戦う文庫 「トクマの特選!」「竹書房SF」に注目
夏といえば文庫フェア。今年も「新潮文庫の100冊」など各出版社の定番棚が書店をにぎわすなか、二つのユニークな文庫の取り組みが注目を集めている。作品選びはもちろん、カバーデザインにも工夫をこらし、存在感を放っている。
徳間書店は昨年10月、徳間文庫内に復刊レーベル「トクマの特選!」を新設した。10~20代のZ世代に向けて、昭和・平成の小説を「令和の新刊」として送り出すプロジェクト。すでに20作以上を刊行し、いくつかは重版がかかった。
目玉の一つがSF作家、小松左京のアンソロジー。第1弾『見知らぬ明日/アメリカの壁』は米国の横暴や中国の軍事大国化など、グローバル化が進む世界の混乱を予見したかのような作品群を収めた。解説は池上彰さんが書いている。
「マンガやアニメを通じて浴びるように物語を楽しんでいる若い世代が、いま読んで楽しめる作品を選んでいます。上の世代が名作として押しつけるような教科書的な復刊ではありません」と企画発案の編集者、池田真依子さんは話す。
笹沢左保をZ世代に
昭和のベストセラー作家、笹沢左保も柱の一つ。笹沢の長短300編を超すミステリー作品から、ファンを自認する作家、有栖川有栖さんがセレクト。前説とあとがきで作品の魅力を丁寧に紹介している。すでに6作を刊行。「昭和・平成の都市文化のなかで、一個人が遭遇する奇怪な魔のようなものを描いたのが笹沢さん。最近、若い世代がミステリーに求めるどんでん返しの趣向も多い」とプロデューサーの井田英登さんは話す。
ほかにも都筑道夫『やぶにら…
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