「大豆田とわ子」識者はこう見る 「坂元さんは確信犯」

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宮田裕介
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 放送中のドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジ系、火曜夜9時)が15日に最終回を迎えます。脚本は、「最高の離婚」「カルテット」などを手がけた坂元裕二さんによるオリジナルで、ドラマ好きをうならせています。

 識者はどう見るのか。メディア文化評論家で、多くのドラマ評論を手がける碓井広義さんは、その過去作から「ホップ・ステップ・ジャンプした」と言います。そのわけは――。(8話までのネタバレになる内容が含まれています)

ストーリーよりセリフ

 ――「大豆田とわ子と三人の元夫」の印象は。

 坂元さんの「実験作」であるというのが全体の印象です。ドラマ作りの固定観念に縛られないことを意図してやっているように思えます。

 ――どういう点が実験作なのですか。

 一つは「脱ストーリー」という点です。このドラマは極端に言えば、起承転結がなく、粗筋に意味はありません。ストーリーに頼らないドラマに挑戦しているからです。

 どんなドラマでも、例えば、何かが起きて恋が生まれたり、何かの危機にさらされて乗り越えたりといった起伏があるものです。しかし、その辺をとっぱらっている印象です。

 ストーリーに代わって、全力投球している印象を受けるのが、登場人物のセリフです。セリフは、人物のそれぞれの個性と関係性から生まれるもの。「ストーリーを追っかけるよりも、セリフを聞いてくれよ」「彼らの関係性を面白がってくれよ」。そんな坂元さんの声が聞こえるような気がします。

 ――他に新しい点はありますか。

 「脱ストーリー」の次に挙げるとしたら、「脱ジャンル」です。

 個性的な登場人物たちから生まれる関係性は、恋愛ドラマでもないし、お仕事ドラマとも言いがたい。ジャンルにとらわれないドラマだと言えるでしょう。個性的な登場人物がいて、日常にこそドラマがあることを映し出しているのではないでしょうか。

視聴者を共犯者に

 ――俳優の伊藤沙莉(さいり)さんが癖になるナレーションをしています。ドラマの冒頭、今週あった出来事として全体の説明をしますが、どんな意図があると思いますか。

 最近は、なくなってしまいましたが、「火曜サスペンス劇場」といった2時間ドラマで使われていた「アバンタイトル」ですね。最初に見どころなどをダイジェスト的に見せて、視聴意欲をかき立てます。しかし、このドラマでは、それを見て展開を予想しても、裏切られる。面白い試みです。

 ――大豆田とわ子がタイトルコールをします。どんな意味があるのでしょうか。

 これも画期的なのですが、タ…

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この記事を書いた人
宮田裕介
文化部|メディア担当
専門・関心分野
メディア、放送行政、NHK
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    栗林史子
    (朝日新聞記者=ダイバーシティ、企業)
    2021年6月8日19時3分 投稿
    【視点】

    「まめ夫」、私も楽しみに見ています。以前取材した方が「名前のない関係性」が近年のコンテンツによく見られるとお話されていたことがありましたが、元夫たちや「恋愛が邪魔」と話すかごめはまさにそうだなと感じています。恋愛や家族という名前でなくても、

    …続きを読む