第6回北方領土「4島返還」封印、安倍氏の誤算 すれ違う日ロ
政権の後半期、安倍首相が力を注いだのが北方領土問題の解決だった。「4島返還」を事実上の「2島返還」に転換して決着を模索したが、ロシアは「揺さぶり」で応じる。
「未完の最長政権」第3部第6回
連続3選を果たした2018年9月の自民党総裁選から、首相の安倍晋三は「戦後外交の総決算」を唱え始めた。北方領土問題の解決がその一つだ。
「領土問題を解決して平和条約を締結する。この戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」。同年11月、シンガポールでプーチンとの23回目の会談を終え、安倍はこう強調した。
安倍はこの会談で、ロシアに「切り札」を切った。日本が従来主張してきた「4島返還」を封印。1956年の日ソ共同宣言に基づいて、平和条約締結後に日本に歯舞群島と色丹島を引き渡すとした、事実上の「2島返還」による決着を模索しようとしたのだ。
シンガポール会談の2カ月前、ウラジオストクでの東方経済フォーラムで、プーチンは安倍を前に「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と突然提案。領土問題の棚上げ・先送りを示唆する発言だったが、安倍はこれを否定しないどころか、「4島返還」から「2島」にハードルを下げた。
「ロシアという国は、下手に融和的アプローチをとる相手を見下し、更に強気に譲歩させようとする」。対ロ交渉に携わってきた一人がこう語るように、日本が大幅譲歩の姿勢を示したことで、ロシアは会談直後から揺さぶりを繰り返す。
【プレミアムA】 未完の最長政権 第3部
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