第9回困窮女性、助ける私がワーキングプア 婦人相談員の現実

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伊藤恵里奈 編集委員・沢路毅彦
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 「明日は休みをもらうから」。8月3日朝、子供に言って車で職場に向かう途中、広島県内の自治体で働く婦人相談員、藍野美佳さん(52)は事故を起こした。ハンドル操作を誤り、対向車線へ。三差路の標識の柱に左側が激突し大破。全身打撲で10日間入院した。

 DV(家庭内暴力)や性被害、住む家がない……。コロナ禍で外出自粛生活が始まった春以降、藍野さんの所には女性からのSOSが押し寄せた。担当は自分一人、他部署に入った情報にも対応する。話を聞いて使える制度を探し、警察や児童相談所とも連携。「夫から逃げていて、10万円の特別定額給付金がもらえない」という女性もいた。暴力を受けていると聞き出し、休日に弁護士事務所に同行した。

 女性支援の要ながら、藍野さんの立場は非正規で手取りは月10万円ほど。日中の仕事に加え、夜は焼き肉屋でアルバイト、週末は県内の別の機関で相談業務。1カ月休まず働いた末の事故だった。

日中は婦人相談員、夜は別の仕事に

 岡山県出身の藍野さんは14年前、子供への夫の暴力に「このままでは殺される」と、3人の子を連れ民間のシェルターに逃れた。その後NPOなどで3年間、相談経験を積み、13年に今の自治体で初の婦人相談員になった。その地域では当時、DV(家庭内暴力)が関係する事件が続いていた。

 岡山から広島へ。当時、子供…

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この記事を書いた人
伊藤恵里奈
盛岡総局
専門・関心分野
ジェンダー史、自然環境、映画、異文化

連載共生のSDGs 明日もこの星で(全14回)

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