対中強硬、トランプ氏 「コロナ失政でパニック」の指摘
トランプ米大統領が中国への強硬姿勢を強めている。29日には、世界保健機関(WHO)からの脱退と、香港への優遇措置の撤廃を表明した。大統領選を控えて自身への批判をかわす狙いが透けるが、米国への影響も大きいだけに、どこまで実現に踏み込むかは不明だ。
WHO脱退に共和党からも懸念
「改革を求めたが、彼らは動くことを拒んだ。我々はWHOとの関係を終了させる」
トランプ氏は29日の会見で、こう宣言した。
トランプ氏がWHOを「中国寄りだ」と批判するようになったのは、米国での新型コロナウイルスの感染が深刻になって以降だ。4月には、拠出金を一時的に停止する方針を表明。WHOは危機対応などの検証をする姿勢を示していた。だが、トランプ氏は5月18日にはWHOのテドロス・アダノム事務局長に「30日以内に大幅な改善に取り組まなければ、加盟も見直す」と通告。具体的な改善要求内容を示さないまま、結果的には自らが設けた期限を待たずに結論を出した。
米国はWHOにとって最大の資金拠出国で、米疾病対策センター(CDC)の職員が常駐するなど、密接に連携してきた。WHOに詳しい米国の専門家は「ワクチン開発や最新の研究などで強い協力関係があり、米国もまたWHOを必要としている」と話す。
それだけに、米国内でも懸念が出ている。米国医師会は「方針を転換し、新型コロナとの国際的な闘いで指導的な地位を捨てないよう求める」との声明を発表。与党・共和党のアレクサンダー上院議員も「WHOの誤りの検証は必要だが、危機の最中ではなく事後にすべきだ」と述べた。脱退手続きの明確な規定はなく、米メディアによると、議会承認が必要かも不明という。
香港の優遇見直し、具体策は言及せず
トランプ氏は同じ会見で、米国と中国を経済的につなぐ香港の優遇措置の見直しも表明した。中国が香港での反体制的な言動の取り締まりを可能にする「国家安全法制」の導入を決定したことを受けて、対中強硬派のポンペオ国務長官が27日、「香港の高度な自治が維持されているとは言えない」との見解を表明しており、トランプ氏の発言もこの延長上にある。一方で、政権内にはムニューシン財務長官ら、中国事業を広げたい思惑が強い金融界を代弁する幹部もいる。
トランプ氏も会見では撤廃の時期や経済制裁などへの具体的な言及を避け、米中通商協議の「第1段階の合意」の撤回をほのめかすような「脅し」もなかった。29日のニューヨーク株式市場はこれを好感し、ダウ工業株平均は会見を挟んで一時約2%、上昇した。
コロナ対応、米国内で低評価
トランプ氏が中国に対して強硬な姿勢を打ち出した背景には、自身を取り巻く厳しい政治情勢がある。
米国は新型コロナウイルスによる死者が10万人を超え、「失政批判」が強まっている。22日のABCの世論調査では、トランプ氏の新型コロナ対応を「評価しない」人は過去最多の60%。トランプ氏が「実績」として誇った好調な経済も、逆に歴史的な不況になりつつある。11月の大統領選に向けても、トランプ氏は複数の世論調査で、ライバルのバイデン前副大統領にリードを許している。
元米政権高官は「トランプ氏…
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