「現実離れした非日常感」が魅力的なファンタジー小説は、多くのファンから支持を得ている人気ジャンルです。しかしいざ書こうとすると、ファンタジー要素を演出するために、物語の設定や世界観の伝え方に悩む方も多いのではないでしょうか?
ファンタジー小説を書くときは、読者を違和感なく物語に惹き込むことが重要です。
今回は、ファンタジー小説のなかでも書きやすい「ハイファンタジー(異世界ファンタジー)」の書き方のコツを紹介します。
また、この記事では小説を書く際の基本を抑えているものとして解説を進めています。小説の書き方について準備段階から詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
ファンタジー小説とは?
ファンタジー小説は、特殊能力や魔法、異種族との交流など、幻想的な世界観が特徴のフィクション作品です。
ファンタジー小説の種類は大きく分けて2つあり、異世界(架空の世界)を舞台とする物語を「ハイファンタジー」、現実の世界を舞台とする物語を「ローファンタジー」と呼びます。
今回紹介するハイファンタジーは、現実世界の知識が求められるローファンタジーに比べ、作者オリジナルの世界観を設定できるため一般的に書きやすいと言われています。最近では、異世界転生・転移型ファンタジーの作品が流行したこともあり、人気の高いジャンルです。
初心者が書くなら
小説を書き慣れていない初心者の方がファンタジーを書く場合、ライトノベルから初めてみることがおすすめです。
ライトノベルは小説よりも文字数が少なく、ある程度のテンプレートも決まっているため、内容をブラさずに書きやすいです。また、挿絵で物語のイメージを読者に伝えやすいというメリットもあります。
ライトノベルのターゲットは、ファンタジー小説の読者層である中高生なので、十分な反応が得られるでしょう。
以下の記事では、ライトノベルを上手に書くポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
ファンタジー小説の書き方
ファンタジー小説の読者の多くは、「現実世界では起こり得ない非日常の疑似体験」を物語に求めています。
そのため、ファンタジー小説を書く際は「異世界感を魅せる」ことを常に意識しましょう。物語の要所要所で、現実と異なる点を魅力的かつわかりやすく示すことで、自分の創造する異世界に読者を惹き込むことができます。
作品の世界観とその魅力を読者に伝えるために、以下2つの手順をしっかりと抑えましょう。
- サブジャンルを決める
- 細かい設定を決める
サブジャンルを決める
ファンタジー小説の執筆に限らず、小説を書き始める前にジャンルを決めることは、物語の世界観を崩さないためにも重要な手順です。
ハイファンタジーにはサブジャンルがいくつかあり、その種類は年を追うごとに増え続けています。以下は異世界ファンタジーでよくみられる設定です。
- 異世界転生
- クロスワールドファンタジー(異世界転移)
- ヒロイックファンタジー(剣と魔法)
- エピックファンタジー(叙事詩)
異世界転生・クロスワールドファンタジー(異世界転移)は、転生・転移後の異世界での冒険が物語のメインですが、主人公はもともと「現代人」であることが特徴です。現代を生きていた主人公が異世界人として生まれ変わってしまったり、何らかのきっかけで異世界にとばされてしまったりして物語が始まります。
『転生したらスライムだった件』や『Re:ゼロから始める異世界生活』などの流行により、近年の異世界ファンタジーの主流となりつつあるジャンルです。似たジャンルとして、現代と異世界を行き来する「異世界往還」もあります。
ヒロイックファンタジー(剣と魔法)・エピックファンタジー(叙事詩)は、超人的な力を持つ英雄が主人公であり、魔物やドラゴンといったさまざまな「悪」と戦う冒険型のファンタジーです。『ドラゴンクエスト』や『ハリー・ポッター』などが大ブームになったこともあり、馴染みの深いジャンルといえます。基本的に、エピックファンタジーは500頁を超えるような長大な作品を指します。
上記は異世界ファンタジーのジャンルの一部であり、他にも「ファンタジー・オブ・マナー」や「おとぎ話」などもあります。自分の書きたいサブジャンルを決め、その特徴に沿ってプロット作成や舞台・キャラクター設定をおこないましょう。
細かい設定を決める
基本的に小説を書く際は、執筆前に詳細を決めます。設定が甘いと、物語を進めるうちに矛盾が生じやすくなり、物語の世界観がブレてしまうからです。
特に異世界ファンタジーは、作者の創造する世界が舞台となるので、かなり詳細に決めないと設定が揺らぎやすくなります。例えば通貨一つをとっても、「貨幣の種類」「通貨単位」「価値の大きさ」など詳細設定はいくつか考えられるのです。
このような現実世界との細かな違いを設定することで、世界観に一貫性を持たせられます。さらにそれを物語に自然に組み込むことで、読者に違和感なく異世界感を魅せることができます。
異世界ファンタジーの設定のコツ
ここまでで述べている通り、ファンタジー小説において重要なのは、いかに読者に違和感や疑問を持たせず幻想的な世界に惹き込むかという点です。すんなりと読めない物語は、感情移入することも難しく面白みが減ってしまいます。
そして読者を物語の世界に惹き込むには設定が重要です。
この章では、異世界ファンタジーの設定を決めるコツをご紹介します。
“お決まり”にオリジナリティを出さない
ファンタジー小説はすでにジャンルとして確立されているように、”ファンタジー小説といえば”の定番設定や世界観が存在します。以下はその例です。
- 中世ヨーロッパ風の世界観
- 主人公や登場人物は魔法などの超人的な能力が使える
- 妖精やドラゴン、架空の生物など、異種族がいる
異世界ファンタジーの多くの読者の間では、上記のような設定はいわば共通認識であり、当たり前のものとして物語が進むと捉えています。
そのため、読者に違和感や疑問を持たせないためには、このような共通認識を守ることも大切です。多くの読者がイメージする定番の設定は基本的に変えず、詳細部分の設定や展開の運び方などでオリジナリティを演出するようにしましょう。
詳細部分のリアリティにこだわる
多くの読者間では上記のような「共通認識」があるため、異世界ファンタジーにおける「現実離れした定番設定」は受け入れて読み進められます。しかし、細かい設定にリアリティがなかったり矛盾が生じていたりすると、読者は違和感や疑問を持ちます。
例えば異世界転移型の物語において、読者は、異世界への転移・魔法を使える世界・ドラゴンがいる世界といった基本設定に疑問をいだきません。
しかし、異世界に転移した主人公がその直後に住人と会話していると、「なぜ異世界の言語で会話できるの?」と疑問を抱きます。
このような場合は「異世界の住人が魔法で話せるようにしてくれた」「はじめは住人の言葉がわからなかったが、魔法を習得したおかげで話せるようになった」といったように、話せるようになった経緯を伝えるなどの工夫をすることで、読者も納得することができます。
このように、読者は細かい設定に対してリアリティを求めます。些細な部分でも辻褄を合わせることで世界観が守られ、読者の違和感を取り除けます。
読者の共感を得る
異世界ファンタジーの世界観に読者を惹き込むコツとして、読者の共感を得ることは非常に重要です。その手段の一つに、「読者が親しみやすい主人公に設定する」という方法があります。
例えば、ターゲットである中高生に合わせて「現代に生きる平凡な高校生」を主人公にします。すると、読者は自分と境遇の似ている主人公に感情移入しやすく、世界観に入り込みやすくなるのです。
このように、読者と主人公に共通点を持たせる・立場を寄せることで、読者の共感を得ることができます。
読者は、物語に対する共感が多いほど世界観に入り込みやすいので、設定に読者の共感ポイントをいくつか仕込むのもおすすめです。
レギュラーキャラクターに個性を持たせる
主人公だけでなく、主要なキャラクターの性格や話し方、境遇、背景も細かく設定することで、物語はより面白みを増します。
例えば、敵であるドラゴンがただの悪者なら倒して終わりですが、じつは呪縛をかけられた人間だったらどうでしょう。単調な世界観からガラッと印象が変わりませんか?
このように、読者が敵に感情移入してしまうような複雑な過去を深く描写したり、あるいはパーティーであるヒロインに個性的なキャラクター(性格)を与えたりすることで、物語に色が付き読者に飽きを感じさせない小説を書くことができます。
異世界の世界観を作りだすコツ
異世界ファンタジーの世界観を細かく設定できても、文字に起こした時に読者に伝わらなくては意味がありません。
この章では、設定した世界観を文章で演出するコツをご紹介します。
ストーリーに”非現実”を絡める
文章で異世界感を伝えるには、執筆前に設定した「現実世界との違い」を物語に散りばめて明示することが大切です。
例えば、以下のようにファンタジー要素の足りないストーリーでは、現代と変わらない風景に見えてしまい、異世界感を感じられません。
- 魔法が使える世界なのに日常的に魔法を使わない
- ドラゴンのいる世界なのになかなか登場せず緊張感がない
- 異種族のいる世界なのに種族間の絡みがない
異世界を題材にしているので、現代との違いをストーリーにこまめに絡めましょう。
また、あえて現代と比較して描写することで、読者が物語の世界観をイメージしやすくなります。
バトル描写はスピード感を出す
バトル描写は、多くのファンタジー小説が取り入れている定番要素です。
異世界ファンタジーのバトルは、魔法や特殊能力を活かした戦いが繰り広げられるのが一般的なため、物語の世界観を伝えやすいシーンといえます。
バトル描写を文字で表現するには、「スピード感」を意識することが大切です。
例えば以下の二文では、スピード感を意識した後半の文章のほうがその場の緊迫感が伝わりやすくありませんか?
- 急いで呪文を唱えるとドラゴンの足元に魔法陣が現れ、地面から炎が吹き上がった。
- 急いで呪文を唱える。ドラゴンの足元にスッと浮かび上がる魔法陣。すると瞬時に炎が吹き上がった。
文章から緊迫感を伝えることで、読者は感情移入しやすくなります。スピード感は、「短文、改行、体言止め」が有効的なのでぜひ試してみてください。
まとめ
今回は、異世界ファンタジーの書き方について紹介しました。異世界ファンタジーでは、「読者に違和感を与えない設定」「非現実を感じさせる世界観づくり」が非常に大切です。
今回紹介したポイントを抑えて、臨場感溢れる魅力的な異世界ストーリーを書いてみてください。
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