2016年もあっという間に後半戦。マーケティング・コミュニケーションにおけるオンライン動画の活用はますます進み、今年に入ってからも数多くの動画が話題を呼びました。
「宣伝会議」11月号(10月1日発売)では、広告会社・制作会社のクリエイターや企業の宣伝担当者4人を“選者”に迎え、それぞれの視点・基準から、今年「話題になった」「効果があった」と思う オンライン動画を挙げていただきました。ここでは、その一部を紹介します。
執筆者
資生堂 クリエイティブディレクター 小助川雅人氏
【CASE1】Channel4「We’re The Superhumans」
とにかくまず「かっこいい!!」と思わせる圧倒的な映像の力。イギリスのテレビ局channel4がリオで開催されるパラリンピックのために制作したこのムービー、シェアボタンを押さない理由は何もなかった。
2012年にも「Meet the Super humans」というムービーを制作し、カンヌのグランプリを獲得したが、前回はパラリンピックの選手を対象とした 「superhuman」というコンセプトを、今回はミュージシャンやダンサーたちにまで押し広げ、上質なエンターテインメントへと昇華させている。
もちろんこれは自局の宣伝であるのだが、描かれているのは人間の持つ「可能性」である。パラリンピックというものを、「障害を持つ人々のスポーツの大会」ではなく「困難を乗り越える力を持つ人々の祭典」 と捉え直そうとする意志が怒涛のように伝わってくる。パラリンピックのムービーで、これを超えるものは当分出てこないのではないだろうか。
【CASE2】TESS COGY「あきらめない人の車いす」
必要な情報を必要な人に届けられる、ということもWebムービーのひとつの特長と言えるだろう。さまざまな理由で歩行に困難が生じた人が、ごくわずかな力で自力で進めるようになるこの車いす。初めて見たときは、そのモノの新しさに目を見張った。
いろんな人に実際に試してもらうドキュメンタリーというシンプルな構成ではあるが、実はよく考えられている。カメラは試した人だけでなく、その家族の表情も追いかける。本人だけでなくその家族にも笑顔が生まれてくる。
見る側にも、車いすの問題は、当人だけでなく家族も共に抱える問題であることが伝わってくる。そして人はこれが他人事ではなく、自分に関係する問題であることを理解する。ならばあの人にも関係するかもという想像力が起動し、そこにシェアが発生する。その時、人はメディアとなる。
このムービーが伝えているのは単なるモノの情報ではなく、一人ひとりの人が 持つ「希望」である。
「宣伝会議」11月号(10月1日発売)誌面では、以下の方々が選んだオンライン動画もご覧いただけます。
◯ドローイングアンドマニュアル 映像作家/撮影監督 藤代雄一朗氏
◯サントリービジネスエキスパート 宣伝部 課長 坂田淳子氏
◯電通九州 CMプランナー 村田俊平氏